ドラマ『anego』で、30過ぎの女と新卒の男がくっつき、「そうか10歳年下の男もアリか」と思っていたら、今度は現実世界で、元アイドルの女と上記ドラマの新卒男役と同じグループの現役アイドルが、20歳差の恋愛中と報道されて、「そうか、それほどまでアリなのか」と、世の疲れた女たちにたらふく夢を与えた。年下男は、日常で深く認知されてきたのだ。

しかし、四半世紀も前に、すでに16歳年下の男となんやかんややっている漫画があった。それが一条ゆかりの『砂の城』である。

この漫画、とにかく畳み掛けるように不幸が訪れる話で、幼い頃は「なんて暗い話なんだ」と思っていた。しかし、大人になって読み返してみると、「不幸とは何か」「なぜ不幸なシチュエーションが起こりえるのか」というメッセージの深さに衝撃を受ける。これを小学生対象の『りぼん』で連載していたなんて……!

さて、恋愛話的にこの話を見ると、大きくは3つに分けられる。ひとつ目は、不幸の集大成な主人公のナタリーとフランシス。ふたつ目は、フランシスの息子の金髪フランシスとナタリー。そして、金髪フランシスとミルフィだ。

ところで、女性向けの漫画では"永遠の愛"は絶対条件だ。男は激しく、ほかを見向きもせず主人公だけを想い続けなければならない。もちろんこれは、「そんな男性が現われないかしら~」と女性たちが思っているからであり、途中で心変わりする男は、めっぽう読者から叩かれるのである(『NANA』の章司とかな)。

ストーリー作りの基本として、恋愛話を盛り上げるにはライバルが登場したりして、カップルがくっついたり離れたりしなければならない。けれども主人公とくっつける予定の男に、「心変わりしたんだ」などと言わせたら、読者から大ブーイング&悪者筆頭になってしまう。だけど、どうにか男を悪者にせずに女をあてがって、ストーリーを盛り上げたい。

さあ、そんな場合どうするか。男を記憶喪失にしてしまえばいいんである。主人公のことは深く深く愛している。しかし、なんとしたことか、男は記憶を失っていたため、あんなに愛している主人公のことを忘れ果て、別に女を作ってしまったのだ!……とすればいい。

こうして、成績優秀、人柄がよくナタリーに一心不乱に一途なフランシスは、なんとしたことか記憶喪失になり、まんまと看病してくれていた女と子供までつくってしまったのだ。その後、フランシスとその妻が死んで、孤児になった金髪フランシスをナタリーが引き取ったところから、世紀を揺るがす"16歳年の差大恋愛"が始まるのである。
<つづく>