ちょっと前に少し我慢をして(すでに述べたが、男向け媒体は気分が悪くなることが多いので)、男性もののエロ漫画をいろいろ読んでみた。そうしたら、どうやら一貫してこんな希望があることが見えてきた。
「偶発的に、かわいい女の子と後腐れなくやれたらいいなあ」だ。
高校の女教師やら明るく無邪気な(でもエロな)同級生やら、年上から年下までタイプはいろいろあれど、男向けのエロ媒体に登場する女たちは登場するや否やさかっており(で、男は全然その気がなかったのにビックリ、みたいな)、皆一様に「やったら責任とれよ、オルァ」などとは言わず、非常にサッパリとしている。
男にしてみれば、女がさかってれば、何の支払いもリスクもなくできるわけだから、こんなに美味しい話はない。学校や近所に、ただただ女に大金をプレゼントするのが大好きなイケメンがいる、みたいなもんである。「据え膳食わぬは男の恥」とかいうけれど、意訳をすれば「タダなら食っとけ大チャンス」なのである。
しかし、「ち○んこなし」の弥樹は違う。なんと、好きな女が自宅へのこのこやってきて、わざわざ直裁に「抱いて」とお願いしているのに、さっぱり食わないのだ。さすがはち○こなし!
女の場合ならわかる。いきなりチャンスがやってきたところで「やっべえ、パンツが」とか「ぼうぼうだよ」ということがあるので(まあそれ自体で女として失格とも言えるが)、泣く泣くお断りということもある。もしくは、相手の本意が見えないときには、ひとまずお断りだろう。
でも弥樹とひとみは、猛烈に両思いなのである。お誘い文句発射の前に、ひとみは「私のどこが好き?」と聞く。これ、女の好きな台詞だよな。聞かれたほうは、相当面倒くさいと思うけど。「おっぱい」とか言ったら殴られそうだし。男のほうだって、好きな理由が「金持ちだから」とか「物買ってくれるから」とかだったら、もの悲しい気持ちになるだろう。でも、人を好きな理由なんて、安易に言葉にしたら、大したことにならないもんである。
が、弥樹は少女漫画のヒーローなので、そんな面倒な質問にも懇切丁寧に答えてくれる。その上でひとみは両思いを確信し、お誘いをするのだ。にもかかわらずお断りをされてしまい、確信を得た上での強気だったが故、ショックもひとしおのひとみ。しかし弥樹は、言外に「ひとみを大事にしているからダヨ」というようなムードで話は進んでいくわけだ。まあ、実際にはどれだけある話なのか。
おもしろいのは、同じ作者が10年ほど後に描いた『イマジン』で、やはり男が主人公のお誘いをお断りするシーンがある。「女としての魅力がないのかしら?」と悩んだ主人公が母親に相談すると、母親は「インポなんじゃない?」などとふざけた後、「我慢して我慢して、美味しくいただく、恋愛上手なんじゃないの?」と慰める。しかし娘が去った後で、母親の本音がぽろり。「もしくは、他に女がいる場合よね」。
時代が下ったのか、対象年齢が上がって、より男が現実的に描かれるようになったのか、とにかく「女の希望(我慢してくれる)」と「実態(フツーはやるだろ)」が両方描かれているのが興味深い。
で、話は戻ってダイパラ。「怒ったの? 迷惑だったの?」と泣くひろみに、弥樹は、「うれしいだけ」と答える。普通に考えたら、うれしいのはそういうチャンスを得たから、ではないのか。すごいぞ弥樹。まるで70歳の老人のようだ。
ちなみに、これの応用編として、女から誘われた場合の対処法。ギュッと抱きしめたりして、「僕は、きみとは真剣に考えてる。もっとお互いを知って、きちんとしてから結ばれたい」とか言ったら、女はイチコロだろうなあ。でも「なるべく後腐れなくやりたい」のが男の本音だとしたら、せっかく女が誘ってるのに、それを断って、わざわざドップリのめり込ませるのはメリットが全くなさそうだ。せめて、気のない女から誘われたときに、上記のような断り方をすると、あとで恐ろしいことになるよ、というくらいかな、使い方は。
<『ダイヤモンド・パラダイス』編 FIN>