先日、知り合いの男の子と飯を食いに行った。その街には、かなり大きな風俗街があった。以前から興味があったので頼んで連れて行ってもらったのだが、いろいろ見ているうちに、めっちゃブルーになってしまった。なんというか、社会の根本的な仕組みというのを目の当たりにしたような。女はその報酬を、金でもらうか、豊かな生活でもらうか、愛情でもらうか、もしくは様々に言い訳されてもらえないか(「お前だってやりたかったんだろう」とかさ)のどれかなんだなというか。報酬が現金であるだけで、やってることは皆同じなんじゃないか……なんて悶々と。

まあ、私がひとり勝手にブルーになるのはいいが、連れて行ってくれた男友達には悪いことをした。「連れて行け」と言われて案内したら、要求した本人が、その後、うつろな目をして、サラダを突くばかりで口も利かなくなったのでは、どうしたらいいのかわからなかっただろうな。申し訳ない。

という思いが少なからずあるのだろうか、女は女性と見まごう中性的な男が大好きだな。やっぱり、自分の中身を差し置いて、いきなり性の対象として見られるのは、女としては不愉快だ。そしてこうした中性的な、性欲の抜けきった男たちを、私は愛情込めて「ち○こなし」と呼んでいるが、もちろん少女漫画にはこの手の男子がてんこ盛りである。そのひとりが、『ダイヤモンド・パラダイス』の弥樹(ヒロキ)だ。

作者は、槇村さとる。70年代から女性向け漫画を描き続けている大作家のひとりだ。この人の作品は、どれを取り上げようか結構悩んでしまった。ベッタベタの少女漫画なら『愛のアランフェス』(フィギュアスケートブームだしな)、個人的に胸きゅんの『NYバード』、いつかガッチリ取り上げたい大人の女のバイブル『イマジン』……といろいろあるが、今回は、この弥樹のとあるシーンを書きたいがために、「ダイ・パラ」にさせていただきました。

「ダイ・パラ」は、80年代中盤、フクフクとバンドブームの訪れがやってきたころの作品である。高校生はバンドをやりゃーモテるだろうとハチ切れん夢を持ち、ギターやドラムを親に買ってもらい(バブル期だったからな)、街中をエアギターしながら「もいやっさもーいやっさもーいやっさベイビー♪」と歌いながら歩いていた時代。

よってこの作品のメイン素材はバンド活動である。主人公の真木ひとみ。彼女がとあるシブいおじさんバンドにスカウトされ、そこで弥樹という、なんか個人的にはGacktのイメージのイケメンと、なんやかんややって、大変なことになる話である。

この漫画にはサイドストーリーがあって、『セブンスアベニュー・ラヴ』というのだが、これの台詞の仕掛けが非常に良くできていて、好きな作品だ。「ダイ・パラ」も「セブンスアベニュー」も、どちらも現在とても重みのあるメッセージが込められているように思う。今流行の生死お涙ちょうだいネタなので、若い男女はぜひ手に取ってみたらいかがだろうか。

ストーリーは前半、弥樹とひとみがバンドでごたごたし、弥樹の痛烈な裏切りへとつながる。そこから後半は、弥樹が裏切りをした理由が述べられ、読者の感情をぐらぐら揺さぶった後、怒濤のクライマックスへ。主人公のひとみもかわいいが、弥樹への惹きつけ方が非常に上手い。

最初変な人→でもひとみに超夢中(第一萌え)→髪の毛切ったら超イケメン(第二萌え)→超才能があるらしい&自分と相性バッチリ、運命の人?(第三萌え)→ところがどっこい腹黒かった?(冷徹な人? ってことで人によっては萌え)→実は彼の心に葛藤が!(第四萌え)→感動のラストという感じ。

久々に読み返してみて、登場人物も、ストーリーも、メッセージも、非常に好感度の高い作品でした。みなさん、ぜひ読んでみていただければと思います。
<つづく>