これだけ大抵の漫画がオッケーな私でも、実はボーイズラブ系がちょっと苦手だ。何がうれしくて、イケメンの男たちが女に目もくれずイチャイチャしなければならないのか。ああ、もったいない。引き替え男性たちは、美しい娘たちがイチャイチャやってるレズものが大丈夫っぽい(つーか、むしろ大好き?)ので、どうも男女の差を感じてしまうなあ。
その理由を考えてみよう。まず女よりも男のほうが、ダンゼン視覚的にエロ萌えを感じるのだそうだ。それは、人間がまだ猿だった時代、雄は雌のおしりが赤く発情しているのを見て、「やったー!」となっていたのだそう。まあ、それが未だに本能として残っているらしいのだ。
引き替え女は、男が発情していようが「はぁ……いつも……だよね」って感じ。同じように私の場合、ボーイズラブ系で男性たちの熱情シーンを見ても「はぁ……」って感じに。しかし男は視覚的に発情するシステムになっているため、レズシーンで「おお、女子が発情している!」ということで、うれしいんではないだろうか。いや、これは想像だけど。
ボーイズラブ発展の理由はいくつかあるのだが、それは『風と木の詩』のときにでもご説明いたしましょうか。ひとつ言えるのは、女の社会進出と時を同じくして、ボーイズラブ系が一般女子向け書籍からほぼ姿を消したということだ。さて、『パタリロ!』は、過激な同性愛シーンでも有名だ。視線で美少年を堕とせる、美少年キラーの異名を持つバンコラン少佐と美少年とがイッチャイチャしている。さてこのイチャイチャの方法がポイントである。
バンコランが引っかけるのは、自分の宿敵ともいえる美少年だ。登場後、すっかり彼の愛人になったマライヒだが、最初はバンコランを狙う刺客だった。バンコランはマライヒを捕らえると、「口を割らせるには、痛みだけが方法じゃない」とか言っちゃって、愛の拷問をしてあげるのだ。そして、ここがヲトメ萌えにバッチリはまったのだ。これまでにも『愛と欲望の螺旋』などで語ってきたが、女にはエロに走る場合に、エクスキューズが必要なのだ。宿敵のバンコランに襲われる美少年たちは、もちろん「いや、やめて!」と拒絶する。
しかし! これもよく見てみると、美少年との絡みのシーン、バンコランはひたすらご奉仕している模様であるのだ。美少年たちは、痛い思い(普通に考えたら痛そうだがなあ……)や悲しい思いをすることなく、ただ気持ちよくなり、ちょっと恥ずかしい感じになって朝を迎える。そりゃ、あれだけサービスしてもらえば、うれし恥ずかしって感じだろう。これこそ女の望むエロパターンだ。これが、男性作家であり、男性同士の恋愛ものでありながら、女に受けた大きな理由であると思う。
『監獄プレイダーリン』で述べたように、女の萌えるエロシーンというのは、ひたすら男が奉仕している。もちろん、男の萌えでは女が奉仕していることが多いのだけれど、その比率がまったく違う。女は視覚で萌えないため、男がもだえているところを見ても、「はいはい」くらいにしか思わないからだ。そのため、女のエロ萌えは、ひたすら男のご奉仕シーンになる。奉仕=劣情ではなく愛の行為、という意味合いにもなるのだから。
ホモものはちょっと……という男子、マライヒを少々貧乳の女子だと思って読んでいただければ、違和感がないかも。浮気者のバンコランに嫉妬する姿など、女そのものだしな。妊娠とかするし。そして大抵の女子は、そうしてこの作品を楽しんでいるのではないだろうか。
<『パタリロ!』編 FIN>