実は、私にはものすごい特技がある。これを聞くと青くなる人も多かろうが、なんと前日の夜に歯を磨かなかった人を判別できるのだ。どうやって判別するかは、企業秘密+これぞ特別能力なのだが、できるのものは仕方がない。そして、これまたいるんである、磨かなかった人。ゲー。

このように、すごい特技を持っているため、私は結構な口内衛生フェチである。そのため、人と食べ物や飲み物をシェアするのが、ちょっと苦手なのだ。が、好きな相手だとこれまた大丈夫なのだから、恋というのはすばらしい。なんでこんな話してるかというと、『ガラスの仮面』読者にはピーンと来てるだろうが、後ほど述べるエクレアの話につなげるためである。

さて、マヤは42巻もの長い間に、3人の男性と恋愛する。年相応の優しい彼氏、桜小路くんと、ドッキドキアイドルの里見さん、恐れ多くも大都芸能の若社長、速水さんである。桜小路くんとマヤの歴史は長い。桜小路くんはマヤがまだ中学生のころからの知り合いで、懸命に演劇に向かうマヤのことを、頬を赤らめて見つめている。マヤの宿敵ともいえる劇団オンディーヌに所属している若手の演技派俳優でもある。

同じ演劇にはまり、マヤのことが大好きで、勝手にバイトを代わってくれたりしていい奴だし、年も近いしマヤにはうってつけ。惜しむらくはエロ漫画の登場人物ではないので(彼らはいつでも恥じらいのかけらもなく積極的だ)、肝心なところで弱気なため、チャンスをつかめないところ。そのうえ、女は身近なところにはトキメかないのが少女漫画の決まりである。

とは言いつつ、何かあるごとにマヤは桜小路くんに「どき」などとしているので、奴がもっと雄々しく積極的だったら、なんとかなったであろう、かわいそうに。デートに連れ出してお揃いのイルカのペンダントなんか買ってる場合じゃないのである。現実でもこの手の「いいひと」は、なかなかおいしい目にあえないので要注意だ。

大体、桜小路くんは非常にタイミングが悪い。マヤとはとても仲がいいので、一緒にいるときにはつい油断してしまうようだ。しかし、マヤが里見さんといい感じらしいという噂を聞くなり、焦って告白、そして大沈没。時代は流れて、今度はマヤが速水さんにのぼせていると、桜小路くんも舞い上がってマヤにのぼせている。

しかし、こういうときに女にとやかく言っても無駄なのだ。好きな男がいるとき、ほかの男がジャガイモに見えるのが、女という生き物。なのにジャガイモが男に変身できる絶好のチャンス、マヤが母親を亡くして辛いときなどにはまったく登場しないのだから、本当にタイミングが悪い。

一方で、アイドルだけあって自信満々、行け行けゴーゴーだったのが里見さんだ。彼は慣れない芸能界でとまどうマヤを、ここぞとばかり助けてあげ、引っ張っていく。マヤも若い女らしく、ああいう元気で自信家の男に惹かれるらしく、もうメロメロ。マヤのことが大好きな速水さんは嫉妬で大変である。

里見さんは、芸人のようにベラベラと元気がよく(個人的意見で申し訳ないが、私はたとえ喋ったとて、ぼそぼそ話す大人しい男が好きなので、里見さんは好みじゃないのだ)、マヤの食べかけのエクレアを「あの子のならいいや」と食べてしまう。桜小路くんが格好つけてブランコに揺られてる間に、里見さんはマヤへの好意をあらわにガンガン押しまくるのである。自分に自信があって積極的な奴が恋愛ではいい目を見るというお手本である。しかし、里見さんは運命の人ではなかった。携帯電話もメールもなかった昔のこと、結構ちゃちな理由で里見さんは姿を消す。

そして改めて全巻通しで読んでみるに、マヤは速水さんとうまくいく気がしてきた。もちろん、そう思って読んでる読者も多かろうが、私が改めてそう考えている理由があるのだ。その辺は次回にゆっくりお話しましょう。何しろ42巻も読んだんだから、もう1~2回書かないとなあ。
<つづく>