先日、昔の知り合いと飲んでいたときに、思い切ってとある告白をしてみた。その知り合いと共通の男性に私は密かに恋をしていたのだが、関係者には秘めた恋で、誰にも言ったことがなかった。で、「実は私、Mくんのことが好きだったんだよね……」と、勇気を出して言ってみたのだ。そうしたら、「ああ、そうだよね。ホントお前、好きだったよな~」という、いったい何のための大告白だったのか、あっさりと返事が返ってきた。
えぇーっ! なんで知ってんの、どうしてなんで、と泡を吹いていたら、私は好意を持った相手に対して、非常にわかりやすいんだとか。
先日も仕事中に、みんなで歓談をしていたとき、お茶請けに用意されたプリンが気になって気になって、ほかの人たちがまったく違う話で盛り上がっているときに、私はひとりでプリンの話をしていたのだそうだ……どうやら、私は頭蓋骨が無色透明で、脳みそだだ漏れ、隠し事一切なしの動物のような生き物らしい。
で、なんでこんな前振りかというと、「少々自分を偽って演技ができたらええなあ」ということで『ガラスの仮面』の話に移るわけである。この漫画は、なにしろ安達祐実のドラマが大ヒットしたので、名前だけでもご存じの人も多かろう。加えてアニメ、この夏には舞台と、様々なメディアで展開されている少女漫画界随一の長期連載漫画である。
内容はスポ根を演劇に置き換えた「演根モノ」で、非常に作りが少年漫画風である。少年漫画の条件である「目的」「攻略」「達成」が、しっかり取り入れられているためだ。連載開始時から一貫している「目的」は紅天女という幻の役を演じること、そしてそのために様々な役柄や困難を「攻略」し、舞台を成功させたりして「達成」する。
演技をするのに体中に竹を巻いて鎧のような格好になってみたり、四方八方からテニスボールを投げてもらったりと、スポ根モノによくある「突飛な練習法」が結構出てきて、楽しませてくれる。そしてそこには、もちろん少女漫画に必須の恋愛話が絡む。ドラマチックでよくできた話である。
演劇漫画がおもしろいのは、作中劇が「番外編」的に楽しめるところ。なにしろ幼少のころに読んだ漫画なので、ファーストコンタクトな情報が結構ある。「たけくらべ」「ヘレン・ケラー」「嵐が丘」というと、私の頭の中では北島マヤや姫川亜弓が演じ出してしまうのだ。
次回からは、このコラムの主題である、マヤと桜小路くん、マヤと里見さん(懐かしいなあ)、マヤと速水さんの恋愛模様を追っていってみよう。
ところで、マヤの永遠のライバルである姫川亜弓は縦ロールのお姫様だが、彼女は気位が高いせいか、恋愛関係にはトンと縁がないようだ。それでなんだか少女のころから色っぽいんだから、さすがはサラブレッドである。
しかしその亜弓さんが、一度だけゴシップを流したことがある。それが、単なる端役の男性との関係だ。超金持ち、美人のお嬢さんが選んだのは、まったく冴えない端役の男だったのである。まるで『めぞん一刻』の響子さんというか。しかしその理由がすごい。恋する女の役に悩んだ亜弓さんは、モテなそうな、引っかけやすい男に目をつけ、褒めちぎって夢中にさせてしまうのだ。美人の大女優のことだから、このくらいは朝飯前らしい。うらやましい限りだが。
そしてメロメロになった顔を見て「これが、恋する人の瞳……」「ふっ」などと言って、目的のモノが見られたら、すぐさまツンケンして捨ててしまう……あの、主人公の永遠のライバルにしては、人間的にどうかと思うんですが、いいんですかね?
まあ、女がいくら恋愛で不義理をしても許されるのが少女漫画というもの。仕方がないのかな。というわけで、次回。
<つづく>