最近私には、ものすごい特技がある。これさえできれば女子モテ間違いなし、小栗旬演じる花沢類のモノマネである。私はよくアニメ声と言われ、どちらかといえば高音のほうなのだが、それでもなぜか男の花沢類に聞こえるらしい。コツは、はじめゆっくり、ワンブレイク後、語尾高音にすると花沢類になる。「あんたのほうが(ゆっくり)……非常事態か(語尾高音)」など、ドラマのセリフはもちろん、この言い方さえ押さえると、「牧野は……今日うんこ、出した?」など到底、花沢類が言いそうにないセリフも花沢類になる。「今日は……泊まってく?」とか言って花沢類風味に誘えば、ムハーンとなって成功率が上がる(かも)。問題は、私がこんなモノマネを習得したところで、女子ウケはするのだが男子モテをまったく無視してるところだな。なにやってんだか。
さて、このコラムでちょいちょい映像化される漫画を取り上げていこうと思ったら、ちょいちょいどころか最近こればっかりになってしまった。漫画原作ラッシュを肌で感じているこの頃。というわけで、『花より男子』。20~30代の女性を中心に、ものすごい人気のようだ。実はドラマは現役で見ていたが、漫画はこの半年をかけてじっくり読んだ。じっくり……いや、ちょっと辛かったのだ。
漫画連載が始まったのは1992年。まだまだバブルの面影残る時代である。女の眉毛は太く垂れ下がり、真っ赤なクチビル、前髪は上下2枚に分かれてセンスのようにパリパリに立っており、ピンキー&ダイアンのボディコンスーツに身を包んで、ウォーターフロントでディナーを食ってた時代。流行に敏感な少女漫画であればあるほど、時代が終わると「流行遅れ」となってしまったファッションを見るのが辛い。
『花より男子』も、序盤はまさにバブルの匂いがプンプンしている。第一、金持ちの子女ばかりが通う学校という設定が、もうバブルな感じじゃないですか。はじめは、そんな時代のギャップに少々苦しんでしまった。しかしそれも束の間、次から次へと押し寄せるヲトメ萌え展開に目を奪われてしまう。こりゃあ、いつまで経っても人気が衰えないわけだ! ひとつ惜しむらくは、もしも私がタイムリーにこの漫画を読んでいたら、もっと無条件に楽しめただろうということ。
もう説明の必要はないかもしれないけれど、舞台は超金持ちの子女ばかりが通う英徳高校、主人公は牧野つくし。そしてその高校は、F4と呼ばれるイケメン4人集が牛耳っているのだ。筆頭は道明寺司。気に入らないことがあれば人を簡単に殴り、貼られた人間はハブにしていいという恐ろしいお札「赤札」を、目をつけた奴に貼ってはいじめを繰り返す。
おとなしく、地味に過ごそうと思っていた貧乏人の娘、牧野つくしは、道明寺のご乱行に、思わず立ち上がる。こうして『花より男子』のストーリーが始まるのだ。正義感にあふれた優等生・牧野つくし、乱暴だけど純情な道明寺、クールでミステリアスな花沢類、そしていじわるな脇役たちによってストーリーが展開される。この漫画の魅力は、「設定のうまさ」「萌えシーン満載」「萌えセリフ満載」の3つにある。すべてにおいてヲトメ萌えを意識した作り方だ。
少年漫画は作家の脳内で突発的に想像された話ではなく、もはや編集サイドで「売れる漫画の要素」をあらかじめ盛り込んで制作されるという。ヒットを呼ぶ漫画の法則というのがあるのだそうだ。そして少女漫画にも、間違いなくそれはある。『花より男子』は、それら「ヒットの法則」を盛り込んだ集大成とも言えるだろう。
次回からは、その「設定のうまさ」「萌えシーン満載」「萌えセリフ満載」についてとっぷりと語ってみましょうか。
<つづく>