火曜の21時に男友達と電話をしていて、「あ、『絶対彼氏』が始まる時間だ。女心の勉強に、一回ぐらい見とけ~」と言ったら、あらすじを聞かれた。それなので「あらかじめ『料理がうまい、ちょっと焼き餅、ちょっとHでスポーツマン』など、理想の彼氏像のデータを登録しておいたら、そのデータが注入されたロボットがやってきた話」と教えてやると、「俺、その彼女バージョン欲しい」と言うので、つい「男用はすでにあるじゃん」などと下ネタに変換してしまった。

もちろん南極何号とかの話である。そういえば女用ってあるのかなと思い、ちょっと調べてみたら……あるじゃねーか!……しかし、なんだか短髪のごっつい柔道男子1体のみ……少々少女萌えではないなあ。こんなもの家に置いといたら、まんまと男を家に呼んだりできないじゃないか。「ほらほら見てみて、私のダッチくんなの。あなたとのどっちが、で・か・い・か・ナ?」でもないだろうしなあ(ちなみに大事な部分は、オプションで好みのものが付けられるらしい)。まあこれが、もこみちの顔した人形でもダメ度は同じなんだけど。

さて、繰り返しこのコラムで述べてきた「男は我慢してナンボ」の法則。この漫画でもしっかり守られているわけだが、この漫画の場合、少し様子が違う。主人公、リイコを想う男は、隣に住むソウシと、フィギュアのナイトの2人。複数の男から言い寄られるのは、少女漫画おきまりの読者サービスで、もちろんその2人は全然タイプが違うものだ。この漫画の場合、タイプが違うどころか片方はロボットなんだけど。

少女漫画では「キス」はよいもの(気持ちのよいもの)、「セックス」はいけないもの、という位置づけだ。キスは、好きではない男から愛情表現の方法として無理矢理とか、これから燃え上がりそうな男から強制的にとか、まあ各種読者サービス的にチューのシーンが盛り込まれる。今まで取り上げた漫画の中でも、『ベルサイユのばら』(オスカルとアラン)、『王家の紋章』(キャロルとイズミル王子)、『海の闇、月の影』(流風とジーン)、『炎のロマンス』(亜樹とルイ)、『きみはペット』(スミレとモモ)、『キャンディ・キャンディ』(キャンディとテリィ)と、少女萌え色が強い漫画では必ずといっていいほど無理矢理チューシーンがある(ふと思ったけど、『悪魔の花嫁』のデイモスって、ホントにプラトニックなんだな。花嫁にするんだとか言って美奈子のあとをついて回って、あまつさえ危機から救ってやったりしてるくせに、なーんも、なんもしてないとは。なんかかわいそうになあ)。一方でセックスに関してはエロ漫画でない限り、萌えシーンとしての扱いはほとんどない。

『絶対彼氏。』でもチューはほんのり萌えシーンとして登場する。まず、宅配されたロボットを起動させる方法が、チューなのだ。フィギュア制作者の趣味ですかね。そのチューによって、相手を恋人として認識する。したがってほかの人間にチューをされると、そのフィギュアはそいつの彼氏となってしまう。しかし一度セックスしちゃえば、金輪際ほかの人間に奪われることはなくなるというのだ。ここで、「男は我慢してナンボ」の法則が登場する。

さっさとやっちゃえば、ナイトはほかの女のものにはならなくなる。にもかかわらず、リイコにその勇気がない。まあ、いくら人間ぽいといっても、相手はロボットだからな。少々南極何号的な匂いがしちゃうから当然だが。そしてナイトは「彼氏は、彼女のいやがることはしないんだ」とか言っちゃって、これまた最終巻まで我慢してくれる。偉いぞナイト。

ところでナイトは「ナイトリーラヴァーシリーズ」のロボットで、夜とぎ用フィギュアなのだそうだ。女型ロボットだったらそれも仕組みは簡単だろうが、いったいどういうシステムになってるのか、すげえ気になるんですが……。開発者も大変だったろうなあ……とか。ああ、大人になると、だんだん夢がなくなるなあ。
<『絶対彼氏。』編 FIN>