学生の男の子に「レディス漫画って、すごくいやらしいんですって?」と聞かれたことがある。うむ、どういう意味で言っているのかわからんが、レディス漫画にはラブシーンがある。昔の少女漫画と違って、男女がマッパで寄り添い、気がついたら朝、みたいなことはない。しかしそれが「すごくいやらしい」かどうかとはまた別物である。
では普通のレディス漫画と、レディスエロ漫画との境界線は何だろう。レディスエロ漫画では、やったら気持ちのよいセックスの話がてんこ盛りで、通常のレディス漫画にはそれ自体がよくてよくてという描写が圧倒的に少ない。女向けの漫画でセックスのシーンがある場合、行為自体ではなく、その前後の心理描写が大事な場合がほとんどなので、男性諸君は、ハアハア言ってないで注意して読むように。
しかし『愛と欲望の螺旋』はエロ漫画なので、主人公たちは行為自体が楽しくて仕方がありません。着物を着せて縛ってみたり、ボールペンやビー玉を使ってみたり、もう探求心旺盛で日用品大活躍。一時期、レディスエロ雑誌では専用の器具が大活躍していて、ローターなんてかわいらしすぎて登場すらしないくらい過激な時期があったが、本作では、そこら辺はやはり高校生だからか、自宅で両親の目を盗んでやってるからか、専用器具は使わず、いろいろと創意工夫が見られます。
さてこの話、泰我兄さんのレイプから始まったものの、すぐにまあやは泰我を好きになり、「兄さんは私の身体が目当てなのかしら」などと悩み始める。そうではないらしいことがガチャガチャやるうちにわかると、今度は泰我兄さんの恐ろしい過去が発覚するのだ。なんやかやすぐにエロシーンに突入する割には、動機付けや盛り上がりが設定されてるところが女性向けっぽい。そしてネタバレになるので詳しくは書けませんが、実の母親のことで罪に苦しみ、悩み、自分を捨てて死んだように生きる泰我兄さん。
泰我兄さんがアンニュイだったのは、大それた過去があったからなのである。ここにも、非常に大きなヒントがある。つまり女はでっかくて深い傷があり、すっごく悩んでいなければ無理強いされた身体の関係なんか、軽く許したりはしないってことなのだ。無理矢理から始まった関係だが、読み手である読者がまあやの気持ちに追いつくために、泰我兄さんは死んじゃいそうなくらいの傷を負わされているのである。しかも泰我兄さん、気持ちいいからなのかわからんが、まあやと寝ることでだんだん生きる気力が湧いてくるらしい。
泰我兄さんは、自分の苦しみの踏み台にまあやを襲うものの(にしては行為の内容がサービス旺盛だが)、まあやに惹かれ、まあやを得難い存在だと思うようになる。そこから2人のラブなアツい関係がひとしきり語られるのだが、この辺、女に大受けのようだ。やらせてもらっているお礼なのか、泰我兄さんは「お前以外は何もいらない」などとサービス旺盛なことをよく口にする。そこら辺の兄ちゃんが鼻くそほじりながらそんなことを言ったら、「なんだ、やっぱりやりたいだけか」と思うが、泰我兄さんは文武両道の秀才くんであるにも関わらず(つまり望めば何でも手に入るのに)、というのがまた女萌えなのである。この辺、芸能人に好かれたい萌えに通じるものがありますね。
その後、双子の片割れ、龍我兄さんも少女漫画お決まりパターンでまあやに惚れだし、ちょっかいを出すようになる。まー普通、自分に気のない女をしつこく追い回すほど殊勝な男は現実にはほとんどいないけれども、女向け漫画にはタケノコのように頻出しますな。それでは次回は、具体的なシーンを取り上げながら突っ込んでみましょうか。
<つづく>