先日、会社員の男性たちとご飯を食べているときに、そのうちのひとりが酒に酔ったのか、こんなことを絶叫していた。「彼女がいるからって、AV見たっていいじゃねーか! そのくらいのことで文句言うなよ! 比べないから! 別腹だから!」。

そうか文句言われたかと、思わず大爆笑してしまった。いかにもありそうなシチュエーションだ。ちなみに女がAV見てたらどうなの? と聞くと、「全然OK! むしろ一緒に試そう、くらいな」と言うので、また笑ってしまった。そうなんだろうな。

ここからひとつわかるのは、一般的に女はエロい男が好きではないが、男はエロい女が好きだということだ。理由はカンタン。女がエロい男を好きではないのは、男が女を求めるとき、女にとってはそれは愛情ゆえでなければいけないからだ。「たまっちゃったから抜きたくて」では、女は納得しないでしょう。便器じゃないんだから。でも「お前が好きだから」なら、仕方ないかなと思う。自分への愛情ゆえ求めてほしいのだから、ほかの女には欲情してほしくないわけだ。AVなんか見てるってことは、「私じゃなくてもいいんじゃないの!」という 証明なのだ。

引き替え男のほうは、エロい女が大好きですな。男向けのエロ媒体を見ていると、毎度毎度、本当に意味がわからないなと思う。女教師、継母、OL、看護婦、どんな女が登場しても、彼女たちの心の機微が理解不能なのだ。つーかおそらく、完全無視。結局は「かわいい顔して、ホントはいやらしんだな」なんてことが言えれば充分のようである。だってAVを借りてきても、インタビューとか前振り部分は早回しでしょ?

そこが男と女の大きな違いで、決して埋まらない深い溝なんだなあと思う。ということを、今回はじくじくと述べてみよう。取り上げた『愛と欲望の螺旋』は、正直、かなりマイナーな漫画であろう。が、エロ漫画の割に8巻まで出版されるなど、人気シリーズであったようだ。現在は携帯コミックスで読むことができ、上位ランク常連、コミックスは中古が1冊何千円もする高騰ぶり……人気シリーズなんである。

読めば女は納得。なぜならここには、女のツボがギッシリ詰まっているからだ。あらすじを紹介すると、主人公のまあやは、母親の再婚により、泰我と龍我というイケメン双子兄さんのいる家に住むことになる。初っぱなから美味しそうな匂いのプンプンするシチュエーションである。泰我兄さんはアンニュイでお勉強のできる優等生。龍我兄さんは、明るいオチこぼれくん。双子のくせにまったく中身が違うのもまた美味しさ倍増だ。で、なんとなくアンニュイな泰我兄さんに惹かれるまあやだが、ある夜、部屋にやってきた泰我兄さんに襲われ、処女を奪われてしまう。そしてそれから毎夜、泰我兄さんのご奉仕が始まるのである……(一応、まあやは襲われているという設定なのだが、兄さんがあまりにサービス旺盛なので、これはもう"ご奉仕"と呼ばせていただく)。

これだけならば、男性向けのAVでも十分通用するストーリー展開ではないだろうか(兄さんたちが嘆美系のイケメンということを除いて)。しかしそこには、女心を納得させるスパイスが盛り込まれていなければならない。まずひとつ目は、これだ。「お前の母親がせっかく掴んだ、この幸せな家庭を、お前は壊したいのか?」と泰我兄さんは脅す。母親思いのまあやは、自分さえ我慢すれば、この新しい家族関係を守れると、兄さんの高校生とは思えない念の入ったご奉仕に耐えるのである(奉仕に耐えるってのも何だが)。

女がセックスに甘んじるには、言い訳が必要だ。その最も萌えな言い訳が「愛する人の弱みを握られる」なのだ。大切な人を守るための自己犠牲……うーん美しい。日本人はこういうの大好きですな。そして最初、自己犠牲だったはずの兄さんとの関係だが、まあ中身はご奉仕なんだから、いつしか(つーか2回目にはすでに)まあや本人もノリノリに。この辺の展開が非常にエロもの独特の風味がありますが、続きは次回に。
<つづく>