世の男子と話していると、「少女漫画なんて読まねーぜ」などと硬派な感じのことを言う人が結構いる。そう聞く度に「あー……、この人はホモなのか……」と思っています。
少女漫画は誕生から十数年のち、70年代に爆発的人気を呼び、支持されていきました。それは「女性による、女性の意見を代弁する唯一といっていいメディア」だったためです。少女漫画創世記には、手塚治虫などの男性漫画家が少女漫画を書いていましたが、まだまだ黄金期は迎えません。女性漫画家が台頭してくるなり、一気に彼女たちの作品が支持されるようになり、黄金期を迎えたのです。そして現在、少女漫画に、男性作家はほとんどいません(ちなみにエロレディース漫画には、どうしても女心のニュアンスがつかめないため、男性作家はいないのだそうだ)。
つまり少女漫画というのは、一般的な世の女の心理を代弁しているわけです。これを否定するということは、女そのものを否定するということ。つまり女嫌い、ホモの証明なのだっ!
……というのは冗談だけど、会話の基本として「ネガティブなことは言わない」「相手を否定しない」は、最低限のマナーです。男子はよく、自分を高めようとして相手を否定することがありますが、これは印象を悪くする以外あまり効果はありません。
例えば、女子とデートとかしていて、「寒いから歩きたくなーい」「この店、雰囲気悪ーい」などと言われたら面倒くさくない? ニットーコマセン出身だと言っているのに「早慶東大以外は眼中になくて」などと言われたら、熱湯かけたくなりませんか?
ですからライトな会話では本心かどうかは二の次で、相手の話には「そうだねー」「それはどうして?」などと理解を示しつつ聞くのがよござんす。女があまりにも間違ったことを言っているときは、「そういう気持ちも分かるけど」とか肯定した後に訂正してやると、言うことを聞きやすい。対人関係の知恵ですな。
まあ、そういう会話術ヒントはいいとして、恐らく男子たちが少女漫画がイヤな理由に、「だって男がナヨナヨしてるんだもん!」というのがあるのではないでしょうか。そうですよ! だって女は線の細い男が好きじゃん! 世の女に絶大な人気を誇るジャニーズに、気をつけができないほどのマッチョはいないでしょう? 女と見まごうイ・ジュンギだって大人気。
現実でだってそうなんだから、漫画には当然、線の細い男が多く登場するわけだ。そのひとつが『日出処の天子』の厩戸王子(聖徳太子)。『ベルサイユのばら』によって女子にヨーロッパ史フェチが量産され、『王家の紋章』によってエジプト古代史フェチが生まれ、そして『日出処の天子』によって日本の古代史マニアができあがったと言える、大フィクション歴史物です。私なんて未だに「聖徳太子ゆかりの……」とか言われたらほいほい行っちゃうもんね。
この漫画は山岸凉子という作家の作品で、彼女は私の中では3本の指に入る大好きな漫画家である。現在は雑誌『ダ・ヴィンチ』にバレエ漫画を連載してますな。この人のお話は非常にムードがあって、人間のダークな部分がドーンと出ていて大好きなのだが、この『日出処の天子』は、少々男子に薦めにくい。というのは、主人公の聖徳太子がホモだからである……うーん残念。でも解説は非常に有効だと思われるので、次回以降じっくり述べたいと思います。
<つづく>