こういうこと書くと年齢と嗜好がばれますが、シブがき隊のアルバム曲に、こんな歌詞があります。
「白い壁に追い詰め、口付けたい」
こういうのを聴いて、少女だった筆者ははぁはぁ言ってたわけですが、今考えるとこの歌詞、おそらく女が書いたんだろうなと思う。だってこういうシーン、少女漫画では頻出だけど、男性ものでは見たことないもん。だいたい、男が白い壁に追い詰めてやりたいのは、口付けじゃあねーだろ!
そう、まあべつに白い壁じゃなくてもいいんだけど、追い詰められて無理矢理チューつうのは、女の最大萌えのようである。こういうシーン、少女漫画に多いこと多いこと!
『きみはペット』にももちろんこの手のシーンはてんこ盛り。もちろん相手はペットのモモです。はぁはぁ。ドラマでは割とお行儀がよかったモモだが、漫画では結構下ネタ満載で面白い。さすがに女性向け漫画であるだけに、性欲のかけらもなさそうな、無生殖男としては描いていないのだ。
しかしそれなのに、スミレちゃんを大好きなモモ。彼女を大事に想うため、我慢に我慢を重ねてくれるのだ。すンばらしい! これまた全14巻中、やはり最終巻まで待ってくれます。モモは女の癒し役ということで、以前に述べた少女漫画における「我慢してナンボ」の教則にしっかり従っているのである。
ドラマで終盤、モモとスミレがやっちゃう(ドラマのみの創作)シーンでは、多くの女がガックリしたようである。あれはプラトニックだったからこそ萌える話なのだ。しかも、した翌日、お互いがお互いの友達に詳細を報告していてちょっと寒かった……そんな生々しい話、聞かされたほうも困るだろうになあ。
さて女は、セックスに関して割と複雑な思いを抱えている場合が多いので、無条件にどきどきするのはチューのシーンです。女性向け漫画でセックスのシーンが描かれていても、そこには何かしら精神的な描写であったりと意味がある場合が多く、純粋に読者をはぁはぁ言わせたい場合は少ない(純粋にはぁはぁ言わせたい場合は、レディスエロ漫画のジャンルになりますな)。無条件にはぁはぁさせるシーンは、チューのシーン、しかも"白い壁に追い詰められ"系なんである。女にとってチューは最大の愛情表現と言えそうだ。
『きみぺ』にこの典型的なシーンがある。白い壁じゃなくて自動販売機だけど、モモがスミレを押さえつけてチューをしてしまうのだ。この漫画のドラマ編でも、「女性に楽しんでもらえるドラマを作りたい」と言って製作されただけあって、しっかりこのシーンは再現されておりました。
この手のチューシーンに萌える理由は以下のとおり。
- 対等(もしくは自分が上)だと思っていたのだが、それは主人公を欺く仮の姿。本当はこんなに力持ちなのに、普段はそれを隠しているの、というのがひとつ。
- こんなに激しく主人公を思っているの、という証明的行動だというのがひとつ。
- 好きな相手に強引にされたいな(そのほうが自分で迫るより楽だからな)というのがひとつ。
そして必ず決まり事として、チューした後はちょっと気まずくなって、お互いバラバラにならなければいけません。じゃないと、「今の出来事はいったい何だったの?」と反芻して、より萌える余裕がなくなっちゃうからですかね。
はい、では今回のポイント。「女の萌えは、追い詰められチュー」でしょうか。ご参考になれば。
<『きみはペット』編 FIN>