主人公のスミレちゃんとお付き合いをしているハスミ先輩。ドラマでは田辺誠一が演じていて完璧な男っぷりを披露していましたが、漫画では違います。まずは、いざお付き合いがうまくいって一度コトが成し遂げられると、ハスミ先輩はもう猛獣のように!

あのですね、世の中の大抵のスポーツは、男女別々に競いますよね。それはなぜかと言えば、男女は体力や能力が異なるからです。男女取り混ぜて行うダンスやスケート競技、テニスのミックスダブルスなんかは、男が女をフォローして、リードしてあげるのが前提となっております。

しかしなぜだか、男女取り混ぜて行うスポーツ(?)、セックスに関しては、大抵の男がこのような気遣いがありません。男の体力に合わせてやってたら(回数やら時間やら!)、もー女は過負荷でゲロ吐きますわ。それで「またお誘い? ほんとに好きなんだからもー」などと言われた日には、引っこ抜いてやろうかと思いますわ(いや、さすがに漫画ではそういうセリフはなかったけど)。

そしてハスミ先輩は、慣れない靴を履いて足が痛いスミレちゃんの様子に気づきもせず、あちこち歩き回らせて靴擦れを起こさせたり、スミレのことを「黙ってそばにいるだけで通じ合える存在」「母性を感じるやさしい人」と言い、スミレに「通じ合ってない、通じ合ってない、それ、私じゃない!」と(心の中で)叫ばれたり。これら、女にはヒジョーに経験豊富な事象でございます。

そう、一見完璧そうなハスミ先輩ですが、やはりそういう意味ではフツーの男だったのでした。1日に3ラウンドとか勝手な思い込みで話を進められたりとかして、結構スミレちゃんは、あれこれ当たり前のように我慢を強いられているわけです。

ところで、この『きみはペット』を連載しているのは「kiss」(講談社)という雑誌で、大人の女性向け雑誌です。つまり『きみぺ』は少女漫画ではなく、女性向け漫画なのですわ。

少女漫画と女性向け漫画の大きな違いというと、それはずばり「登場する男が完璧かどうか」。やたら精錬完璧(あえてこう言わせていただく)な男が出てくるのが夢見る少女漫画で、「そうそう、男ってこういうもんよね」という、男に対する女の不満があらわになってるのが女性向け漫画です。

少女漫画だったら、完璧な男性像であったはずのハスミ先輩ですが、悲しいかな現実的な、一般的な男として描かれているわけで。だからこそ、モモというペットが登場できるのです。完璧な男しか登場しない少女漫画には、モモという心の癒しは必要ないわけだ。この漫画は、女性向け漫画だからこそ成立するネタなのです。

わたくしだって男が完璧な生き物だと思ってた若いころなら、「こんなひよひよした男、絶対いや!」などと思ったかもしれませんな(遠い目)。
<つづく>