1000年もの長きにわたって、愛されている物語がある。『源氏物語』だ。これを原作にした『あさきゆめみし』は、受験生の格好の参考書でしたな。原文を読んでみると、なんだか光源氏がバカ殿みたいな感じなので、激しくガックリした記憶がありますが。

さてこの『源氏物語』。一言で言うならば、バカスカ女を食いまくってる浮気男の話です。そして『朱鷺色三角』の零も割と女ったらしです。しかし、彼にはそれが許される免罪符がある。

イケメンだからではない。東大理三確実の秀才だからでもない。一番の理由は、彼がアンニュイだからである!(断言)。

話を読み進めていくと、彼の初恋の物語が公開される。相手は和可という女性だ。まだ小学生だった零は、この薄幸の女性(またしてもアンニュイ!)にほのかな恋心を寄せる。恐らく10歳以上も年齢の違う初恋だ(しかも初体験の相手! しょしょしょ小学生だっつーのに!!)。しかしこの恋は、少々悲しい感じに終わってしまう。それがどーも、零のトラウマになってるっぽいのだ。

光源氏もそうだった。自分の継母に横恋慕して「悲しいなあ」という大義名分をもって、彼女に代わる人はいないかなー、いないかなーと、夜な夜な女をあさって歩く。この大義名分がなかったら、世の女は決して光源氏を許さないだろう。

そう、光源氏も零も、なんだかんだだらしないことをしながらも、結局は1人の女に夢中なんである。「辛い恋が忘れられなくて、つい女に甘えちゃってるのね」という大義名分が、女たちに彼らのご乱交を黙認させるのである。

もちろん女が投影するのは、食われて捨てられる女ではない。自分は「そんなかわいそうな彼を、なんとか支えられる人間なのよ」と思い込むわけだ。しかも零は少々家庭が複雑。一族のなんやかんやに巻き込まれて、かわいそうな生い立ちなのだ。ここでも女は、「私が温かい家庭を作ってあげる!」などと鼻息を荒くしちゃうのである。

以前、テレビ番組で、「好きな男性がゲイだったらどうする?」という質問に、こう答えた女がいた。「私が、更正させてあげる」と。こーいう不遜なことを言うから、女という生き物が嫌いなんじゃないか? と思ったものだが、まあ、女はこと恋愛に関しては非常にポジティブなんである。

トラウマ持参の遊び人好き。もちろん、ヤリ捨てられるその他大勢になりたいわけはなく、女は、そいつの最後の女になりたいのだ。実際、「昔の女性が忘れられない」などと言う男って結構いるもんで、そんな奴にがんばってみたところで、面白いことなんかひとつもないんだけどねー……。

世の男性たちよ。
遊び人になりたかったら「アンニュイ」だ。「複雑な家庭」「忘れられない人」のキーワードで、女をバカスカ落としてみてはいかがでしょうか。
<『朱鷺色三角』編 FIN>