このところ、恋愛からドーンと遠のいている筆者ですが、もともとは頭に花咲く恋愛体質で、人は恋をするために生まれてきたのだと信じておりました。誰かを好きで好きで手足が痺れるなんてことはザラだったし、ニトロが欲しいくらい胸が痛くなったものでございます。そんな話もすっかり過去のこと。最近は、すっかりそんな恋愛気分から遠ざかっております。なぜなら、そんな恋愛気分のからくりに気がついちゃったから。
人を好きになるのに、もっとも必要なのは"妄想"なのだ。ほんのり「いいな」くらい思うのには必要ないけど、手足が痺れるくらいの"好き"には、妄想が不可欠。どんどんと自分に都合のいい妄想を組み立てて、「ああに違いない」「こうに違いない」と勝手に決めつけて、自分に都合の悪いことはシャットアウト。相手を理想の人にしちゃうんである。だからこそ、口から泡が出そうな緊張感を生み出したり、手足が痺れたりできるのだ。
そんな痺れるような幸せを追い求めるシゲタは、ホントに痺れちゃうような恋をいくつもする。時枝くん、岸和田さん、大河内さん、ためちん、そして最後のトドメが旅館の若旦那。どれもこれも、みーんな妄想混じりに恋が盛り上がって、一気に砕け散っている。盛り上がれば盛り上がるほど、その後の急降下も激しくて、ジェットコースターのごとくシゲタはどん底へ。現実が見え始めて、妄想という魔法が解けると、痺れるような幸せは何処かへ去って、イタい現実のみが残されるんである。目をつぶって犠牲を払ってしまっていた分だけ、痛手が大きい。
唯一、この痛手がない相手がタカハシ。初っぱなの妄想がないからこそ、激しい想いもないのだけれど、その分、大きく壊れることがなかった。タカハシのほうも、バカで、だらしなくて(仕事にも男にもな)、ダメダメだということを分かったうえでシゲタのことが好きなので、溶けるべき妄想がない。
そうそう、結局は大人向け女性漫画によくあるように、平凡な男でも誠実(タカハシの場合は不倫になっちゃったりしてるけど)で、自分を愛してくれる男といるのが幸せよ、ということでしょうか。
そして妄想なくして恋をしてこなかった筆者は、妄想の後に来る地獄のような現実直視が恐ろしくて、このところ恋愛干ばつ気味なんである。そのうえ、自分から誰かを好きにならないだけならまだしも、無条件に愛情を注いでくれる男もなし、と(そんで毎週少女漫画読んであれこれ妄想してるとは、イタすぎだ……)。
<『ハッピー・マニア』編 FIN>