先日、友人を誘って、男女数名ずつで食事に行った。まープチな合コンみたいな感じだ。戻ってきて女子で感想会を開いたところ、「まあ、いい人だったんじゃない?」みたいなことになった。……で? いや、別にねえ……みたいな。どうにも、どうこうする気にならない。
男と付き合った経験が何度かあると、「スゲー面倒なんだよな」ということも知っている。自立している女は、生活がすっかりできあがっていて、収入もある。つまり、「この歳になると、あのスゲー面倒な思いをしてまで付き合いたいという男は、よっぽどのことがない限りないだろう」と思うのだ。
よっぽどのこと、というのは、相手から猛烈にプッシュされるとか、激しく自分の好みだとか。面倒くさいことが待ち受けていたとしても、それを上回るいいことが期待できる場合である。
男と付き合って何が面倒かと言えば、友人には焼かない焼き餅を焼いたり、「本当に私と結婚する気があるのかしら」とか、なかなかズバリと聞けないことを考えなくてはいけなかったり、気が利かなくてイライラしたりすることだったり、もしかしてやってくるかもしれない辛い別れだったり。まあ、何度か男と付き合っていれば、このテの経験は大抵いやっちゃってるわけだ。いいことよりも悪いことを予測して、二の足を踏むようになる。
『花のO-ENステップ』を読んでいたころ、筆者はまだ中学生だった。リアルの男と関わったことがなく、男というのは少女漫画に登場するような、女に都合のいいことしか言わない輩なのだと思いこんでいた。
この漫画は前半、直時と浩美が愉快にイチャイチャして、軽く大仏くんがちょっかいを出してくる程度で、非常に軽いテンポだ。どんなにいざこざがあっても2人の気持ち自体がすれ違うことはなく、ライバルと言っても当て馬程度で、読者は安心して読んでいられる。
しかし後半、トラブルがテンポよく起こって事が大きくなり、2人は信頼し合うことができず、ドロンドロンの展開になるのだった。
誤解が誤解を呼んだりして、直時と浩美に徹底的なヒビが入りそうになる。直時は昔関係を持った女と再会し、浩美は初恋の男と再会する。2人の気持ちはこじれにこじれ、ライバルだったはずの大仏くんなんか、2人の仲を取り持つまでになる。
これが精神的に幼かった自分には、耐えられない展開だった。「このマンガ、前半は面白いけど、後半はキライ」だと思っていた。前半が好きだったのは、なにより直時と浩美の強い絆が感じられ、イヤなことがまったく描かれないからだ。だけど後半は、直時には浮気相手みたいな女が登場するし、浩美のことを直時は理解してくれない。ああいやだ、恋愛はもっと楽しいモノじゃないの? だってほかの少女漫画にはそう描いてあるじゃない! てなところか。
だけど、まあそのうち、マンガに登場するようなシーンは大抵嘘っぱちで、恋愛が楽しいばかりのいいものでもないことがわかってくる。筆者の場合はおかげで漫画の恋愛いざこざくらいはどうでもよくなったけど、逆に「少女漫画では徹底的に夢を見たい」という女子には、恐らく相変わらず男女のシビアな話は不人気だろう。
付き合いはじめの女が面倒くさいタイプかどうかは、少女漫画の好みでわかるかもしれないぞ。いつまでもドキドキ片思いものとか、夢見る恋愛物語が好きな女は、要はそういう乙女な欲求が自分に向かうってことだから、高確率で面倒くさそうだよ。
<『花のO-ENステップ』編 FIN>