長らく超ロン毛にしていた髪をガッツリ切ってみた。「失恋しちゃったの」というわけではなく、切った理由のひとつは「超ロン毛の女には不思議ちゃんが多い」よーな気がすること(美容師さんにそう言ったら「分かる気がします」だそうだ)がひとつ。あとは、しげしげと『輝夜姫』を読んでるうちに、「ショートもいいか」という気になっちゃったのだ。

『輝夜姫』屈指の不思議ちゃん……というか爆発的なわがまま娘・まゆは、超ロン毛女である。自分の思い通りにならないとかんしゃくを起こし、晶を手に入れるためなら、後先考えずになんでもやっちゃって、で、プライドだけはいっちょ前という、まー頭の悪い女だ。しかしとある事件をきっかけに彼女は改心し、非常によい娘へと変身する。と、どうだろう、なんと髪の毛が20cmほど短くなっているではないか。まゆの超ロン毛は、わがままの象徴だったのだ。

このほか、『ぼくの地球を守って』の亜梨子(木蓮)のロン毛が神秘性や超能力を示していたように、超ロン毛には、作者の意図が込められていることが多い。

リアルでも「髪を切らない」という強い意志には何か理由があるはずだ。そしてその意志の内容によっては、不思議ちゃんとなってしまう危険があるのだ。もー、過去の自分が不思議ちゃんじゃなかったことを切に祈るのみである。ちなみに自分がロン毛にしていた理由は、「ビジネスの初対面でインパクトを与えたい」であった。最近、外見でこけおどしをする必要がなくなって、ロン毛は一定の役割を終えたのである。髪を切り捨ててみると、なんとも頭が軽い。いやほんと物理的に。

『輝夜姫』で、女子のちびっ子不思議ちゃんキャラがまゆなら、男子のちびっ子キャラは碧だ。少年漫画ではちびっ子男子は主人公格。しかし少女漫画では、集団の男子が登場したら、その中に大抵ちびっ子がいて、そしていつでも人気は最下位。『輝夜姫』でも、碧は晶のことが大好きなのに、晶は碧のことなんか見向きもしないという、セックスレスな役割だ。思春期(16歳)なのにかわいそうに。

ちびっ子男子キャラの役回りとしては、主人公がドキドキしないので心許せるお友達だったり、母性本能をくすぐられて息子扱いするかだ。でも嫌われキャラじゃないから、主人公がちびっ子に無理チューされるシーンとかもよくある。熱烈な恋愛対象にはならないけれど、ある一定の役割はきっちり持っているのである。本人はしっかりサカってるのに、女には男扱いされないという、あんまり美味しい役じゃないですが。

碧も、晶が男とイチャイチャしてるのを我慢して見てたりして、痛い目にはたっぷり遭うし、優柔不断で泣き虫で病弱で、どこを取ってもいいとこなしな、哀れな役回りである。

現代の読み物は、構成のすばらしさではなく、衝撃的な出来事で物語見せていくという、大変バラエティ乗りの作品が多くなってきたらしい。ひとつひとつの言葉や出来事が、全体の構成の中で重要な意味があることを理解しない読者も増えているようなので、もっと作家は、きっちり構成を組んだ物語を作って、読者の目を肥えさせていってほしいものである。『輝夜姫』は、(序盤は)壮大な構成がパズルのように組み合わさっていって、この上なく面白い。漫画賞納得の作品である。
<つづく>