「すべての男がセックス以外に考えていること」という本がイギリスで大ヒットしているというニュースを読んだ。なにそれ、どんなこと考えてるの? と思って中を開くと、白紙なんだとか。そうですかやっぱり男はそんなことしか考えてなかったですか……。
男性にそんな話をしたら、「じゃあ、女はなにをいっつも考えてるの?」と言われた。セックスのことではなさそうだ。ひとつを選べと言われたら、もちろん恋愛だろう。何しろ少女漫画の欠かせない要素のひとつが、恋愛だからだ。
ちなみに恋愛といっても「より金持ちの男を捕まえる方法」とか「自分を大事にしてくれる男を捕まえたい」とかいうことであって、セックス自体のことではない。自分が男にちやほやされていい思いをしているところを無想はしても、そういうことをすっ飛ばしてセックスしたいとは思わないものである。この辺が男女のいさかいがなくならない理由だろうなあ。
ところがこの少女漫画界において、登場人物同士がまったく恋愛をしない、希有な作品がある。それが『動物のお医者さん』だ。主人公は北海道にあるH大学の獣医学部に通うハムテル。その友達の二階堂と、ちょっと変人の菱沼さん(女)の3人を中心にして話が進む。せっかく大学で男女が集っているのに、ひとつも恋愛問題が起こらないのだ。これはホントに少女漫画では珍しい。
で、久しぶりに読み返してみて意外でしたが、ハムテルがかっこいい。登場する女と一切恋愛の話が持ち上がらないのだから、ハムテルは作中で女(読者)にアピールを一切しない(例えば雨の日に女に傘を貸すとか無理チューするとか)。
ではどこら辺がかっこいいかというと、物事に一切動じないところ。男と付き合っていて、なにが面倒くさいかって、すぐ怒ったり、むくれたりされることでしょう。ガーガー怒られ暴れられたら生命の危機があるので恐ろしいし、むくれられたら気を遣って面倒くさい。ちなみにパートナーのこういう感情の起伏に寛大なのは男のほうであるような気がするが。
だけどハムテルは、おばあさんにどんなにわがままを言われても、二階堂がどんなにダメな男でも、教授にどんなに迷惑をかけられても、決して怒らないのだ。だからといって無神経なわけじゃないところがまたポイントである。男の無神経って宇宙レベルだからな。こういうことにも女は細かくイライラするものなのだ。
また、飼い主に似ると言われるのが飼い犬。ハムテルが飼っているシベリアンハスキーのチョビは、これまた物事に動じず、なにをされても怒らない。大型犬が暴れたらかなり恐ろしいよな。そう言われれば、女にとって男って大型犬みたいな感じかも。暴れられたら生命の危険があるほど恐ろしいけど、慕ってくれれば超便利、みたいな。
次回はハムテルをも凌ぐ、かっこいいキャラについて。
<つづく>