先日、初対面の人間から「気が強いでしょ?」とか言われたので、少々腹が立って「親しい人で私のことを気が強いと言う人はいません」と言ったら、「クリエイター仲間はみんな気が強いからでしょう」などと言われた。その人はとある大きな宗派のお坊さんだったので、「てめえの寺にはびた一文賽銭をやるものか」と思ったものである。まあ、思ったことをそのまま本人に言ったので、ホントに気が強いのかも知れませんが。
しかし、当たっているかいないかも重要だけど、付き合いの長い親しい人間から評価されるならともかく、初めて会った人間になぜそんな断定的意見を言われなければならないのか。と、思っていたら、後で聞いた話、「ちょっと気を惹こうと思った」だそうだ。「もう二度と口を利くものか」と思ったので、そういう意味ではたっぷりフィーチャーしましたが。
男性と話をしていて、とても不愉快になるのは、「すぐにわかったようなことを言う」人。本人としたら「理解力がある」とか「立ち位置を確立したい」とか理由があるんだろうけれど、どうやらものすごく方向が間違ってることが多いのだ。で、なんでそんな間違いを犯す人が多いかと考えてみると、間違いなく「女が男にそれを求めているから」なのである。ああ、厄介だ。
『彼女の彼』は、好きになった小川くんには春美という美人の彼女がいた、という青春物語である。昔の恋愛少女漫画はいいな。変に重たくなくて。今の少女漫画は、まず友達作りから悩んでみたりして、とても生々しいんだ。制服のスカートが足首丈なので時代を感じるけれども、人が劇的に死んだりするので、今の若者にもお勧めである。
で、その小川くんは、いかにも少女漫画のヒーローらしくめちゃくちゃかっこいい男子である。昔の漫画らしく、ちょっと不良で、でも女に優しい。春美が小川くんに「(私)、サイテーの女かもね。別れよーか」と言うと、小川くんは「別れねーよ」「春美ちゃんにすてられたら、おれ生きていけねーもん」だと。
じゃあホントにそう思ってるかといったら微妙らしくて、こういうこと言う理由は「サイテーの女だとか、別れようとか、みんな、おれをつなぎとめるための、おまえのギリギリの手段だよな」と思っているからだそうだ。春美は、自分勝手に小川くんを振り回していることに罪悪感を感じているのだ。でも自分の気持ちを持て余していて、大人しくもできない。いっそ見捨ててくれたほうが楽かも、とも思うけれど、春美は小川くんに「必要だ」「好きだ」と言ってもらいたいのだ。淋しいから。自信がないから。
とまあ、複雑な女心をズバリと読み解き、小川くんは「春美ちゃんにすてられたら、おれ生きていけねーもん」などという下手なプライドかざしてたら言えないことを平気で言う。たかだか中3男子のくせになあ。大抵の女は、男にこう言われたら前言撤回だ。「やっぱり別れない!」となる。それほど強く思ってくれているのねと、多少なりとも勘違いできて嬉しいのだ。浮気がばれちゃったときとかにも使えるぞ。「俺はおまえに一途です」は、割とどんな女にも使える殺し文句。いざというときに、波動砲のように発射するがよい。
だけど「君、××だよね」とか、相手の人となりをわかったように言ったりするのは、私みたいにそれを毛虫のように嫌いな女もいるし、大抵当たらないので安全策ではない。女が、というか相手が何を望んでいて、何を喜ぶのかは、マニュアルを読んでも絶対にわからないのだ。ただ相手と向かい合うしかない。いろんなことを話し合って受け入れて、そうやって理解を深めるしかないのだ。
春美と小川くんは、なんでも話せて、仲よくて、ドラマで見るような憧れのカップルなんだそうな。そんなカップル、なってみたいもんである。
<つづく>