子どものころに、どれだけ上質のものに触れるかって、とても大事だと思う。私は結構、歌詞に小うるさくて、言葉の使い方やテンポがとても気になるほうだ。『佐野元春のザ・ソングライターズ』という番組を見ていて、おお、元春ってすごくそういうことを意識して曲を作っていたんだな、ということがわかった。私は子どものころ、テープが伸びるくらい元春を聴き倒していたころがあったのだ。知らないうちに私は、どっぷりと元春先生に言葉について教えを賜っていたようである。残念ながら音楽制作の仕事はしてないけども……。
子どものころに読んでいた漫画を大人になって読み返してみて、「いいものを読んでたな」と思うのって、とても幸せだ。『シュガシュガルーン』は、いやんなるほど大人になってから読んだ漫画だけど、すごくいい話だな、と思う。安野モヨコの話は、全然説教臭くないのに、説教要素が存分に含まれてるところがとても好きだ。特に子どもの漫画には、隠れ説教的な要素をいっぱい盛り込んでほしいものである。
さて『シュガシュガルーン』。魔法少女が主人公の話である。女王候補のふたりの魔法少女が、女王になるための試験をとおして、イケメンとふれあいながら成長をしていく。この登場イケメンが、なかなか興味深い。
まずロッキン・ロビン。なんだかローリー寺西が頭に浮かぶんですが、モデルなんですかね。あまーい言葉で、そこら中の女をコロリと逝かす、プレイボーイ。
ピエール。学校のアイドル的存在で、クールで猫舌でアンニュイ。親衛隊がついてて、学校乗っ取りとか考えてそうな、悪の生徒会長みたいなキャラ。
ウーとソール。主人公ショコラの騎士。元気があって優しくて、まっすぐな少年たち。
てなところが主な男性キャラですが、人気ランク的にはどうなのか。もちろん少女漫画の登場人物たちだから、女が嫌いなキャラ設定にはなってないんだけど、恐らくハッキリ票が分かれてるんだろうな、と思う。
ダントツに人気なのは、ピエールだろうなあと思う。こんな中学生がいたら、メロメロになりそうだ。なぜって、とにかく女はアンニュイな少女漫画キャラが大好きだからだ。もちろん、ショコラとくっつけるためのキャラだから、特別にかっこよさそうに描いてる、というのもあるでしょう。それにしてもアンニュイさにおいては、他の漫画の登場キャラに比べても群を抜いてアンニュイである。何しろ、幼いころに誘拐されちゃった子どもらしいのだ(しかもその容姿を見込まれて!)。そうして、氷の心を持つように訓練させられたというのである。こういうのに女は弱い。「ピエール様をなんとかしてあげたいっ!」みたいな少女が続出したんじゃないでしょうか。
ちょっと大人になると、ロッキン・ロビンみたいなのもいいなと思うようになる。「100年間熟成させた原酒だけをブレンドしてできるルビーの液体」を用意してきて、「百年前から準備されていたんだよ。今夜こうしてふたりが愛し合うことは」とか言う。真剣に溺れたりしなければ、耳心地のよいことを言ってくれる大人のお付き合いってスパイシーでいいな。例えお喋りでも、女遊びをきっちりこなしてきてたら、無神経なことは言わなそうだし、一途な思いはなくても、不義理をしない安心感がある。男友達にひとり欲しいね。
そして、一番どうでもいいのが、ウーとソールですか。適度に優しくて、適度に頼もしくって、でもイマイチインパクトがない。まーだけど、現実では一番モテそうだよな。漫画界ではアンニュイ男子がモテの王者で、他にかなうキャラなし、という感じだけど、現実には、「ハッキリ押したヤツが勝ち」だから。きっちり好きな女を守って、好意を見せたら、それが一番響くのです。
次回は全8巻の中で、最大の萌えシーンについて。
<つづく>