筆者は先日、ずっと片思いをしていた男性が彼女と別れたという話を聞いて、激しく小躍りをしている。彼らはとてもラブラブな感じで、壊れそうもない二人だったので、地の底までガックリきていただけに、まあ人でなしだけど嬉しいのだ。
しかし通常、ラブラブカップルのどちらかに横恋慕したところで、あまりうまくいくことはない。障害があればあるほど、恋は盛り上がるからな。適当にカップルのよい刺激となっておしまいって感じ。それが少女漫画だったらなおさら、主人公やその男に惚れるキャラというのは脇役で、偉いこと引っかき回して疲れてさよなら、という感じである。
『ロリィの青春』ではどうか。割と初っぱな、両思いになったロリィとクレオは、残りの9巻分、めいっぱいトラブルに見舞われる。その最大級が、シベールだ。シベールは、金持ちの坊ちゃんで、破天荒なロリィに心惹かれる……しかし彼女には、クレオという想い人が。さあどうする、シベール?(というか作者?)。
シベールは普段、乗馬なんかして割と元気なのだが、実は心臓を患っており、手術をしなければ余命1年とかの重病人だったのだ。そして延命のための手術も、成功率20%という。どうする、シベール?
シベールは苦しい息の下、ロリィに言う。
「手術が成功して元気になったら、僕のお嫁さんになってくれる?」
「なら僕、手術するよ!」
脅迫である。
その後、シベールはテラスでじっとりクレオとロリィの部屋を監視して肺炎を起こしたり、2階から飛び降りたり、これでもかこれでもかと、寿命を縮めるような行為を繰り返す。ロリィはプレッシャーでへとへとである。
で、結局手術して、ろくに歩けもしないうちにバラの花束を持ってロリィのところに押しかける。すっかりクレオと密月していたロリィは大慌てだ。そしてシベールは言外にこうアピールする。「ここで断られたら、ボク死んじゃうつもりなんだっ」。
……とうとうロリィは根負け、シベールと婚約するのだった。曰く、「クレオはひとりで生きていけるけど、シベールは私がいなくちゃダメなの!」。まんまとシベールの作戦にのっかっちゃったのである。
まあでも、シベールもクレオも、どちらもロリィのことが大好きで、どちらも大金持ちだから、貧乏人のロリィとしては、どっちでもよかったと思うけど。ところがこんなかわいそう作戦でロリィをものにしたくせに、その後、シベールはなんと心変わりをしてしまうのだ。シベールは思った(に違いない)。「めいっぱい同情惹いて気を惹いたりしなきゃよかった……」。
実際はこれ、男よりも女が使う手っぽいけど、どうでしょう、みなさん。男と女なんて、くっつくときはくっつくし、ないときにはない。下手な小細工したって、将来の気持ちまで責任持てないんだから、なすがままにしておけばいいのに。いや例えば、貧乏人のロリィが、生活安泰のために金持ちのコンツェルン男とかを引っかけるなら、めいっぱい小細工すればいいと思うけどさ。
しかしまあ、シベールとロリィの結婚式で、驚愕の小細工を発動し、ひとまずシベール問題は片がついた訳なのでした。詳細は原作にて。そしてその後、ロリィは失明してみるもののまた治り、母親の実家が判明したり、底なし沼にはまってみたりと、波瀾万丈な青春を満喫するのであった。やはりタイトルになるだけの青春を過ごしたようである。
<『ロリィの青春』編 FIN>