いきなり夜の話題で申し訳ないが、男性からお誘いを受けたら、「え、子どもが欲しいの?」と言ってみようかな。と、主婦の方々に言ったら、「重たっ!」と言われた。「あんたね、年上の女を誘うなんて、気軽に後腐れなくできそうだ、と男は思ってるからよ。それをそんな風に言われたら、面倒くさくて仕方がないじゃない!」だそうだ。

ちなみに主婦の方々の中には、美容とアンチエイジングのために若い男を捕まえる人もいるそうで、生活の安定、心の安定は夫に任せて、夫ではもう味わえないドキドキをよそに求める、という美味しい状態を作っているらしい。でもそれは、「夫」という安全パイがいるからこそできることじゃないのかな、と思う。

『少女漫画』3作目は、『あさきゆめみし』だ。主人公は、図書館司書。そこに営業に来る男性と不倫している。不倫というのは正しくないな、男には中学のころから付き合っている彼女がいる、という状態なのだ。そして2人が意気投合するのが、『源氏物語』ネタだ。源氏に登場する姫について語り合い、風景を見ては同じシーンを連想する。こりゃ女はコロリとくるわ。

男と同じ知識のネタでとことん話し合えるというのは、レアなことでさぞかし楽しいだろう。大抵は、相手の話に付き合ってフムフム聞くことが多い気がする。特に、「多くの女は知ってるけど、多くの男は知らない」のが『源氏物語』だ。ここに引っかかってきたら、グラッと来るよ。男性はぜひ『あさきゆめみし』を読んで、これのどこに女が惹かれるのかを考えてみてほしい。とりあえず「どういうところが面白いのかな?」と聞いてみると、一応会話のネタにはなるぞ。

主人公は、両親の不幸せな結婚生活を目の当たりにしていて、「結婚するつもりはない」と言っている。男とは、割り切った付き合いだった。しかしそこで、同僚の女が孕んだことから話が一気に加速する。相手はなんと主人公が付き合っていた男だったのだ。男には中学生のころからの彼女がいたはずだ。じゃあ自分はいったい何だったのか。男はのうのうと言う。

「まいったよ、どっちにも泣かれて。キミだけが俺のオアシス♪」
「それより褒めてよ、俺、責任取ったんだよ。男らしくない?」

主人公はこう答える。
「そうね、同僚に手を出してもノコノコやってきてもらいタバコして、手料理食べて、一人暮らしの部屋だからホテル代もいらないし、外食してもワリカン、最高のオアシスよね」

男性はこれを聞いて、どう思うのだろう。
「だって結婚願望がないって言ってたじゃないか!」
「割り切った付き合いじゃなかったのかよ!」
だろうか。この男も同じことを言う。

そうじゃないんだよ。前から付き合っていた彼女は仕方がないとしても、結婚をするつもりがないからと言って、手当たり次第によその女と遊んでいいわけじゃない。男にとってその女がオアシスなら、男は女に、どんな支払いをしてバランスを取っているというのか。金なのか気持ちなのか安らぎなのか。人との付き合いは、ギブ&テイクで、支払った分だけ返ってこなければ、メリットがなければ成立しないのだ。

「結婚なんか望んでないけど、人間としての信頼と敬意を払ってほしかった!」と、主人公は叫ぶ。自分は、男にオアシスのような場所を提供してきた。その支払いが、同僚の妊娠だ。殴り倒したって足りないだろう。

結婚を望まないことが、イコール都合のいい女であることではない。男は、その微妙なさじ加減を理解することができるんだろうか。難しいんだろうな、というのが予想だ。

「紫の上、槿の君、朧月夜、花散里、女三宮……女はすべての姫にはなれなくても、六条御息所にだけはなれるのだ」
そうかもしれないな。

父の愛人と母のくだりなど、この章では「女の人生と結婚」の話がてんこ盛りだ。もちろん、源氏がそういう話だからだけど、構成が非常に上手い。引き替え、ちょっとタイトルがその中身に追いついていない感じなのか、惜しい作品である。
<『少女漫画』編 FIN>