さて前回は、ヒロインのキャロルにメロメロのメンフィスについてお話ししましたが、今回はその他の状況について。

このキャロル、各巻に数回は、男に抱きかかえられたり縛られたりという少々Mッ気シーンを見せてくれる。これまた読んでる少女たちは「うわぁいいなあ」と、ブルブルしているでしょう。女性は「力ずくで汚されたい」と、少々思ってる節があります。実際にやられたら嫌悪感たっぷり・通報ものなので要注意ですが、妄想の世界なら多少は自分に好都合なイメージが混じるので、いいのだなんでも。

それに、いろんな男といちゃいちゃしたとしても、「力ずくだったから仕方がないのぅ♪」と言い訳すれば、自分の清純性は保たれるわけだから(そーいう言い訳して浮気された男性も多かろう)、「さらわれる」「奪われる」は、ヲトメにとって最高のシチュエーションなんである。

そして、連載当初からしつこくキャロルを追い回しているイズミル王子。ヒッタイトという大国の王子様のくせに、いつでもどこでもキャロルの後をウロウロ、ちょろちょろ、もうストーカー状態である。メンフィスが熱血タイプなので、そのライバルとして冷酷明晰タイプを登場させたのでしょう。

が、このイズミル王子、彼に捕らわれたキャロルが、逃げ出す前に油断させようと思っておとなしく腕に身をゆだねた瞬間、「おお、姫はとうとうこの私に心を許したか!」とか言っちゃって、少々単純すぎです。逃げる前におとなしくするなんてのは、脱走のいろはの"い"ですよねえ……。マッハで騙されんなよ王子、そんなんでヒッタイトは大丈夫か?

まあそれはおいといて、主人公キャロルが男にモテてちやほやされるだけが、この漫画の魅力ではありません。キャロルは、古代で泥水を真水に浄水してみたり、コブラの解毒剤を使ってメンフィスの命を救ってみたり、過呼吸を治してみたりと、21世紀の知識と科学を少々使って、えらく古代であがめ奉られるのだ。

たいした努力もしないで、すごい力を発揮して、チヤホヤされたい……男女問わず永久の夢です。キャロルは、「21世紀の人間だったら、誰でも知っていることよ!」と言って謙遜してるつもりらしいが、これがまたうまい。それなら、21世紀に生きている読者の少女全員にチヤホヤされる能力があるということである……呪いがかかって古代に行けたら、の話だけど。

この漫画を読んで、男子が参考にできることはあまりなさそうだけど、『ハッピー・マニア』の重田加代子が「『王家の紋章』を棺桶に入れてくれ」と遺言するほど、ヲトメにとってはバイブルなんである。
<『王家の紋章』編 FIN>