人間、バランスって大事だ。仕事したら遊ぶ、遊んだら勉強する、勉強したら運動する。成功したら失敗する。ベンチャーの社長さんなど、経済的に成功していて、かつ人的魅力のある方たちは、みなやはりバランスがよい。
私には勉強の得意な、いわゆる高学歴の知り合いが多く、彼らのことが大好きだが、その人たちの経歴を考えてみると、えらく長い下積み経験があるとか、全国レベルのスポーツ経験があるとか、「私の知り合いでさー」とかネタにできるほどドロップ経験がある人に限るようだ。頂点を知っているなら、どん底も知っていてこそ、人としての魅力や奥深さにつながるのらしい。この辺の話は『30歳 女を鍛える転び学』に詳しく記しているので、ぜひ!(またも宣伝)。
女の立場から言うと、知的好奇心を満足させたり、スポーツをしたりという部分では、男子と遊ぶのは、この上なく楽しい。一方で「会話」を楽しむなら、だんぜん女子だ。聞き上手だし、美容、タレント、本など、共通の話題が多い。精神的満足感は、男子からは味わえないことが多いのだ。しかし女友達が、こんなことを言っていた。「オカマの友達がいるんだけど、いいのよこれが! 酔って泊まりに行っても危なくないし、朝起きたらご飯は作ってくれるし、話は面白いし、質のいい女友達みたい!」。
『オトメン』の飛鳥ちゃんは、まさに質のいい女友達だ。ファンシーなものや少女漫画が大好きで、恐らく一緒に買い物に行ったら、極上の時間が過ごせることだろう。しかしそれだけでは「男」というより、「女友達」。そのため飛鳥ちゃんは、剣道も柔道も空手もできる、「漢」として設定されているのだ。
だいたい、「男っぽい」ということのイメージって、ガサツ、気が利かない、話を聞かない、女心がわからない、という、少々女子的にはネガティブな感じ。りょうちゃんのお父さんがもっとタチ悪くなったみたいな。だってさ、ケンシロウさまが編み物しながら「妻夫木クンの笑顔ってステキよね」とか言いそうな感じは全くもってしないじゃない(かろうじてユリアと一緒に住んでいるときに木彫りの人形かなんか彫ってるので、手先は器用そうであるが)。
しかしファンシー大好きな飛鳥ちゃんが、その度合い以上に武道に秀でていれば、人としてのバランスがよいわけだ。そしてそういう意味では、飛鳥ちゃんとりょうちゃんも、バランスがよい。女以上に女らしい飛鳥ちゃんに比べて、りょうちゃんは、人間としてどうかしてるんじゃないかと思うほど、家事ができないのである。
男女は、あらゆる意味で凸凹であるので、自分ができないことをできる相手とは、尊敬しちゃうので関係が長持ちする。りょうちゃんが不器用であるからこそ、飛鳥ちゃんは何かしてあげたいと思うのだし、飛鳥ちゃんが家事裁縫の達人だから、りょうちゃんは飛鳥ちゃんを尊敬できる、よい関係なのである。ま、あとは「能力的に足らない女子」という主人公のほうが、「できなくったっていいのよね」と安心感を与えて、読者に受け入れられやすいこともあるが。
それから逆に、男女の仲に必要な「共通項」。大抵の人は"趣味が同じ"相手がよいという。テニス愛好者は愛好者同士でくっつくことが多いし、昨日見かけたカップルは、炎天下に真っ黒な2人でお衣装をまとっていた。このように、男女という違う生物がくっつくには、2人を結ぶ、何か共通項が必要なのだ。飛鳥ちゃんとりょうちゃんの場合、武道が共通項という、ちょっとレアな感じなんだけど。
で、今ちょっと困っているのが、『オトメン』人気だ。漫画喫茶に行くと、全巻持ち出し中のことが多く、せっかく調べに行っても読めないことが多い。仕方がないので、書店に仕入れに行ってみたら、今度はイケメン茶髪男子が立ち読み中で手に取れず。読み終わるまでブラブラ待たなければならなかった。
それにしても『オトメン』立ち読み男子よ、こういうのを読もうという意思はすばらしい。その清潔感あふれるスタイルといい、女性心理を学ぼうという気持ちは、激しく評価に値する。きっと大モテ間違いなしだ。が、立ち読みしないでちゃんと購入しろよ……。
<つづく>