仕事で、たまに男性のヘアメイクアーティストにメイクをしてもらうことがある。これがなんだかすごく気持ちがいい。男の目から見て、どんな色やヘアスタイルが似合うかを教えてもらい、キレイにしてもらえるというのは、女にメイクしてもらうよりも数段お得な感じ。「ゲランの新作いいよね」などという会話ができるのも通常、女としかできないのだが、この上なく楽しい。
また、男にご飯作って食べさせてもらうのも好きだ。ナイフとフォークを握ってチャカチャカ待っているだけで、次々とお皿に料理が盛られ、お酒をついでくれるというのは、なんだか執事と姫のような感じである。
それからついでに、共通の映画や小説、漫画の話ができると嬉しい。特に少女漫画の話は、コアでレアな感じがしてよい。「姉貴が買ってるからさ」とか「女友達から借りて」とか言われれば、イヤな感じはしないどころか、「へーえ、少女漫画ねえ……」などと、無駄に男気を出す輩よりは、何十万倍も感触がよいものである。
また、誕生日や何かの記念日に、さらりと花束や、かわいいピアスなどをくれるのもよい。物をくれ、と言ってるのではなく、恐らく男子は興味がないだろうものを「喜んでくれるかな」と考えてくれている、というひたむきさがよいのだ。もちろん、花やアクセに興味のない女にやったら台無しだが。
というわけでいきなりまとめると、女は上記のような「オトメン」が大好きなのである。メイクができて、料理ができて、女子系の共通の話題があって、お花やファンシーなものが好き。そんな男と一緒にいたら、さぞや楽しかろう。
『オトメン』というタイトルを見ると、少々男子は手をつけにくい作品に思われるかもしれない。『おっぱいバレー』が、勇気を出して観てみると実はいい話だった、というのに近いのか。『オトメン』には、上記のような少女趣味の男子が山ほど登場する。しかしこうした趣味が、作品中でコメディとして扱われているところに、うまさがある。……ハッキリ言って、めちゃくちゃ面白くて、腹筋が痛くなる。
主人公は、正宗飛鳥。柔道、空手、剣道の達人で、身長180cmのイケメン高校生である。学校では「男の中の男」と言われている。が、実は少女漫画大好き、ファンシーグッズラブ、料理や裁縫はプロ並みの、ヲトメな男子なのである。「人に秘密がある」というのは、それだけでギャグになりやすいわけだが、彼は自分が「オトメン」であることをひたすら隠しつつ、学園生活を送っているのだ。
そんな彼の秘密を知るのは、恐ろしく家事のできない都塚りょうと、実は少女漫画の人気作家である橘充太というクラスメイト。コアメンバーの3人に加え、激しい恋の妄想少年や、メイクが趣味の剣道部主将、お花オタクなど、各種オトメンたちがしんしんと話を進めてくれる。
この漫画が面白いのは、古典的な少女漫画や少年漫画を揶揄しているところにある。作中、原ちえこみたいな夫婦とか、オスカルさまの目をした大物作家とか、そりゃ北島マヤだろという女優が次々と登場する。めちゃくちゃマッチョなタッチになることもあれば、新條まゆやら、現代のスイート少女漫画のタッチで描かれることもある。もしもこの作品を読んで「面白くないなあ」と思ったら、こうした元ネタ知識がないのかも、と考えてみよう。
今、TVドラマも放送中だが、ドラマでもこうしたワルノリはしっかり継承されているようだ。それにしても岡田将生って、整ったお顔をしているね。というわけで、次回は個々のキャラについて。
<つづく>