今回は「Android搭載端末との共存」について。愛機周辺をApple製品で統一するのもいいが、ユニークな他社製デバイスと共存させるのもまた一興、その接着剤として「AirPlay」を活用すべし……という流れで話を進めていこう。

Android採用のAV機器が増加中

折からのスマホブームを意識してか、世間では「スマート○○」を名乗るデバイスが花盛りだが、AppleがiOSを外部にライセンスするなどありえないこと、そうなればメーカー各社は製品へ自由に組み込めるAndroidに目が向くことは必定。スマートフォンと共通のGUIを持ち、アプリという形で機能を追加/削除できるのだから、ポータブルオーディオのプラットフォームに採用されても不思議はない。

Android 4.0を搭載したWalkman「F805シリーズ」

エプソンのシースルー型ヘッドマウントディスプレイ「MOVERIO BT-100」も、そんなAndroid搭載家電のひとつ。昨年末に発売され注目を集めたものの、HDMI端子を持たないため肝心のコンテンツが不足していたところ、7月のアップデートでDTCP-IPに対応、レコーダーに録画された地上/BS/CSデジタル番組の視聴が可能になった。このような対応も、Androidを採用したメリットといえるだろう。

今回の主役。Android 2.2を搭載したシースルー型モバイルビューア「BT-100」

Android搭載家電は、PCとの連携はWindowsを念頭に置いていることが多いが、筆者が試したかぎりOS Xでも活用可能なものが多い。今回はBT-100をテスト機として、iTunesライブラリにストックした映像資産を「AirPlayで視る」ことにトライしてみよう。

Androidデバイスを「AirPlayレシーバー」に

同じヘッドマウントディスプレイに分類されるSONY HMZ-T1/T2(密閉型)とは異なり、BT-100は焦点距離に応じて画面の大きさが変わって見えるシースルー型なので、装着中でもコントローラを目で確認しつつ操作できる。しかし、トラックパッドの操作には違和感が……。スマートフォンのように液晶画面とタッチパネルが一体化しているのならばともかく、前方を見る姿勢で手元を正確にイジるのは難易度が高い。

Xperia acroを使いGoogle Playから「AirPlay/DLNA Receiver(LITE)」をダウンロード、そのAPKファイルを「AppSender」でOS Xへ転送した

AirPlayなら、その問題をスマートに解決できるはず。BT-100がApple TVのようにAirPlayレシーバーとして機能すれば、OS XからiTunesを利用し、映像/音声をでワイヤレスで"飛ばす"ことができるはずなのだ。問題は、そのようなAndroidアプリがあるかどうかだが……。

探せばあるもので、Google playに「AirPlay/DLNA Receiver(LITE)」なるアプリを発見。これをBT-100にインストールできれば、MacやiOSデバイスからAirPlayで映像/音楽を楽しめるに違いない。

しかし、BT-100はGoogle Playには対応していない(デバイスがGoogleの定める仕様を満たさない)ため、アプリを直接ダウンロードできない。筆者はXperia acroで「AppSender」というアプリを使いAirPlay/DLNA ReceiverのAPKファイルを抽出し、Bluetooth経由でOS Xに転送、そこでMicro SDに書き込みBT-100で読み取り、ファイルブラウザでインストールという手順を踏んでインストールを行った。起動してほどなくすると、iTunesに見慣れたAirPlayのボタンが、そしてAndroidのデバイス名が!

APKファイルをMicro SDへコピーし、それをBT-100でインストールした

AirPlay/DLNA Receiver(LITE)を起動すると、AirPlayの入力を監視するサービスが常駐を開始。AirPlayのほかにも、DLNAのレンダラー(DMR)として機能する

iTunesを起動したところ、Androidデバイスが出力先に現れた!

OS XのiTunesからAirPlay出力した結果は……予想以上に快適。快適な視聴スタイルはAirPlayならではで、もちろんiOSデバイスからも"飛ばす"ことができた。5分ほどの映像(いずれもH.264、320×240/29.97fps+AAC)を5タイトルほど続けて視聴したが、映像/音声とも特に支障なく再生できた。アプリの説明文には、より安定した動作を求めるのなら有償版をと書かれていたが、無償のLITE版でもじゅうぶんイケそうだ。

ただし、コーデックや解像度が変わるとフーレム落ちが発生しはじめる。筆者が試したかぎりでは、BT-100の解像度(960×540ピクセル)を超えるMPEG-4 1,280×720/29.97fpsはフレーム落ちが激しく、満足に再生できなかった。H.264でも640x480/29.97fpsとなると、フレーム落ちが目立ちはじめ、次第に映像と音声にズレが生じてくる。快適に鑑賞できた上限は、H.264/253×264/29.97fps+AACが上限だ。

ところで、AirPlay/DLNA Receiver(LITE)にはデコーダーの設定画面が用意されており、ハードウェアデコードとソフトウェアデコードを選択できる。スペック表によれば、BT-100はMP4(MPEG4+AAC)とMPEG2 TS(H.264+AAC)のハードウェアデコードに対応しているはずで、コーデックの組み合わせ次第ではさらに高解像度でもスムーズな再生を狙えるのかもしれない。

AirPlay/DLNA Receiver(LITE)では、デコーダーの種類をハードウェアデコードとソフトウェアデコードとで選択できる

iPhone 5で撮影したムービー(H.264/1080p)はデコードの処理が間に合わないためか、かなり激しくフレーム落ちが発生した

いずれにしても、このようなDIY感覚は久しぶり。すべてをApple製品で完結させると、スマートで扱いやすいことは確かだが、機械をイジり回す楽しさが低下するからだろうか。個人的には、多少苦労してでも、BT-100のように個性的なデバイスと付き合っていきたいのだが。