WWDCでのアナウンスから待つこと4カ月半、メジャーバージョン12を数える「macOS Monteley」が公開された。新機能の多くはiOS/iPadOSと共通、たとえばAppleデバイス同士がFaceTimeでつながるSharePlay...いやいや、iOS 15と大きく変わらない機能は他の記事に任せ、当コラムではレシーバーとしても動作するようになった「AirPlay」にスポットライトを当ててみたい。
「MacへAirPlay」のメリットとは
AirPlayといえば、MacやiPhoneの場合「送り出すもの」であり、再生した音楽や映像を他の(より音質/画力に優れた)機器で鑑賞するための機能だ。当初は音声のみのAirTunesとして登場し、後に映像のサポートもくわえられたAirPlayへと進化を遂げた。2017年には、複数のデバイスへオーディオストリームを同時に出力できるようになった「AirPlay 2」がリリースされたが、技術の根幹部分は大きく変更されていない。
仕組みはこうだ。Remote Audio Output Protocol(RAOP)のもと受信側はHTTPサーバとして動作し、送信側との接続が確立するとリバースHTTPとして静止画/動画コンテンツ系の伝送を開始する。データは一方向へ送信されるのではなく、イベント情報として非同期にやり取りできるため、一時停止やスキップなど即応性が求められる処理にも対応できる。動画部分はDRM機構(FairPlay)を利用できるため、厳しい著作権保護が要求される映画などのコンテンツも扱える。
そしてMontereyでは、macOSに受信側(AirPlayレシーバー)としての機能が実装された。音声のみ扱えるAirPlayレシーバーは、AirPlay登場当初からサードパーティにもライセンスされてきたが、映像も扱えるレシーバーは長い間Apple製デバイス(Apple TV)にしか存在しなかった。それが数年前に方針転換され、SONYやLGなど一部メーカーのテレビにもライセンスされるようになり、門戸が広げられるように。Macでも利用できるようになるのは時間の問題だったといえる。
その理由のひとつが「AirPlayミラーリング(画面ミラーリング)」。MacにAirPlayレシーバーが実装されれば、MacBook AirやProがiPhoneやiPadの画面をほぼリアルアイムに映し出せるモバイルディスプレイへと早変わりする。テレビに比べて画面サイズは小さいものの、持ち運べることは大きなアドバンテージになる。
少しでも大きい画面で写真やビデオをチェックしたいときにも、AirPlayは役に立つ。たとえば、写真アプリのスライドショーを「Mac(Book)へAirPlay」すれば、少なくとも13インチ以上の画面サイズで写真を鑑賞できる。AirDropやメール添付に頼らずiPhoneで撮影した写真/ビデオをMacで鑑賞できるのは、多くのユーザにとってかなりありがたい機能なはずだ。
「MacへAirPlay」を試す
「MacへAirPlay」の裏側は、基本的には従来どおり。第240回で紹介したとおり(リンク)、Apple Wireless Direct Linkのネットワークインターフェイスを利用し、Wi-Fiベースのピア・ツー・ピア接続を確立したあとUDPで映像/音声データを受信する。
実際、AirPlayミラーリングを利用しているとき(ほかのMacからSSHでログインして)tcpdumpを使い「awdl0」を調べてみたが、セッション開始後はIPv6アドレス経由で膨大な量のパケットが飛び交っていた。
音声・映像の転送をひととおり試してみたが、音声に関しては他のAirPlayレシーバーと同時再生できたことから、複数のデバイスへオーディオストリームの同時出力に対応したAirPlay 2準拠だとわかる。MacがAirPlay対応のWi-Fiレシーバー/スピーカーとして動作するわけで、Macをオーディオ再生に活用しているユーザには楽しみが広がりそうだ。
映像についても、Apple TV/tvOSに転送した場合とほとんど変わらない。AirPlayミラーリングを有効にして、iPhone 13 Proで実行中のゲームアプリ画面を転送してみたが、キャラクターをぐりぐり動かしてもほとんど遅延を感じることなく描画される。必ずフルスクリーンとなるため、iPhoneの画面を小さなウインドウで(ピクチャ・イン・ピクチャのように)表示することはできないが、これはかなり使える。カメラアプリのプレビューもリアルタイムで映されるから、古いiPhoneを監視カメラライクに活用する、といった応用もできそうだ。