iPhone 7が発表されたとき、イヤホン端子の廃止が話題となった。これからはワイヤレスということでBluetoothイヤホンがにわかに注目を集め、実際よく売れている。しかし、そういう時代だ……などと他人事を言ってはいられない。
考えてみれば、イヤホン端子はMacへ残しておく積極的な理由に乏しい。効果音など必要最低限の音は内蔵スピーカーから出せばいいし、廃止すれば筐体デザインの自由度も高まる。音にこだわるユーザにはUSB DAC/ヘッドホンアンプという選択肢があるし、音質的にも断然有利だ。わずかとはいえ、製造コストの節約にもなる。2015年発表のMacBookではMagSafeやUSB A端子を躊躇なく切り捨てたAppleのこと、その後のiPhone 7とBluetoothイヤホンの関係を思えば、じゅうぶんあり得る話だろう。
それはともかく、現行のMacはBluetoothオーディオのサポートがそれなりに進展している。Bluetooth/A2DPでは必須の「SBC」にくわえ、iOSデバイスでも採用されている「AAC」、そして音質に定評ある「aptX(アプトエックス)」という3種のコーデックが、OSレベルでサポートされているのだ。SBCとAACの2種にとどまるiOSと比較すると、一歩進んでいると言っていいだろう。
もっとも、SONYとクアルコムからAOSP(Android Open Source Project)にソースコードの寄贈を受け、Android陣営は「Android 8.0(Oreo)」からハイレゾ級の音質を実現できるLDACとaptX HDに標準対応している。実際に対応するかどうかはベンダー次第だが、イヤホン端子に音質面でキャッチアップするための施策として、macOSにもぜひ取り入れてもらいたいものだ。
コーデックを変更する
前述したとおり、現在のmacOSはSBCとAAC、aptXという3種のコーデックをBluetoothオーディオでサポートしている。使いかたはかんたん、Macとイヤホン/ヘッドホンなどのBluetoothオーディオ機器をペアリングして電源オンするだけ。この辺り、当コラムの読者に詳しい説明は不要だろう。
どのコーデックで再生されるかは、メニューエクストラに表示されたBluetoothアイコンをControl+クリックすればわかる。音楽を再生しているとき、プルダウン表示されたメニューの「デバイス」項から接続したBluetoothオーディオ機器をたどると、「有効なコーデック:aptX」などと表示されるはずだ。
問題は、意図しないコーデックが表示されたとき。macOSにはコーデックを選択する機能が標準装備されていないため(macOSに限らずどのOSもそうだ)、予想と異なるコーデックが表示されることがあるのだ。
たとえば、aptXとAACをサポート(SBCは必須)するイヤホンの場合、まずはaptX、うまくいかなければAACまたはSBCという順に接続を試すが、どういうわけかSBCで接続されてしまうことがある。aptX対応のオーディオ機器なのにSBCで再生されるとあらば、せっかくの高音質コーデックを生かせず損をした気分になること必定、なんとかしなければならない。
そんなときは、Terminalから以下のコマンドラインを実行しよう。これでaptXが強制的に有効になり、次回の接続からaptX対応イヤホンであればaptXがコーデックとして利用される。つまり、Bluetoothオーディオ機器を接続している場合には、いちど接続を解除した後に接続しなおせばOKだ。
$ sudo defaults write bluetoothaudiod "Enable AptX codec" -bool true
AAC対応イヤホン(aptX非対応)で同じことを行う場合は、以下のコマンドラインを実行する。aptXのときと同様に、次回Bluetoothオーディオ機器を接続したときから設定が有効になる。
$ sudo defaults write bluetoothaudiod "Enable AAC codec" -bool true
もしBluetoothオーディオ機器がaptX対応なのにAACで接続したいという場合には、前述の方法によりAACを有効化したうえで、aptXを無効化するコマンドラインを実行しよう。もちろん、Bluetoothオーディオ機器がaptXとAACの両方に対応していることが前提だ。
$ sudo defaults delete bluetoothaudiod "Enable AptX codec"
$ sudo defaults write bluetoothaudiod "Disable AptX codec" -bool true
なお、GUIで同じことを行いたければ、Appleのデベロッパーアカウントを取得したうえで開発者向けダウンロードページ(リンク)にアクセスし、「Hardware IO Tools」の最新版を入手しよう。そこに含まれる「Bluetooth Explorer」を起動し、メニューバーで「Tools」→「Audio Options...」を選択すれば、前述したコマンドラインと同じことがGUIで行えるようになる。効果は変わらないが、だいぶ扱いやすくなるはずだ。