MacBook AirにアルミボディのMacBook、そしてiPhone 3Gと、新製品が目白押しだった今年のApple製品。来年はいよいよSnow Leopardがリリースされます。ジョブズCEOの基調講演はなくなりましたが、Macworldでは何がしかの新製品は発表されるはずです。2009年に期待しましょう。

さて今回は、年末特別企画として「2009年におけるOS Xおよび関連製品のトレンド」を語ってみたい。現在公開されている素材を料理するのが当コラムの原則だが、年に1度ということで、ご容赦願いたい。

Snow Leopard

来年前半リリースとの見方が多い「Snow Leopard」。Intelアーキテクチャのみ対応、Carbonのサポート終了となるか

2009年中の発売は確実としても、Snow Leopardには不確定要素がいくつかある。その1つが「PowerPCはサポートされるか否か」という問題だ。

筆者は以前、PowerPCのサポート終了に否定的という意見を述べたことがあるが、どうやら転向を表明しなければならないらしい。つまり、Snow LeopardはIntelアーキテクチャのみサポートされるだろう、ということだ。

その状況証拠が、サードパーティーの動向。Adobeは8月に、次期After EffectsでPowerPCサポートを終了する方針を明らかにしている。有力ベンダーのAdobeがこのような決断を下したということは、ユーザからのフィードバックなどを通じて得た数値があるはずで、それがPowerPCのサポート終了は大勢に影響しないという判断の根拠になっていると考えられる。当然Appleもその類の数値を把握しているはずだ。

もう1つが、Carbonの廃止。当コラム「第279回 まだ見ぬ「雪豹」を勝手に想像する(その1)」でも触れたとおり、Leopardの段階でWebKitやCore Animationなど最新API群を呼び出せなくなっているなど、すでにフェードアウトの気配は濃厚だ。刷新されるAPI層の呼び名は……安直だが「Pure Cocoa」かなあ、と筆者は予想する。互換性の確認を含め、要チェックの項目といえるだろう。

サブスクリプションサービスの拡大

毎年一定の売上を確保することは、営利企業にとって至上命題だ。そのために新しいハードやソフトの開発スケジュールが組まれ、四半期ごとの売上計画に基づき、タイミングを見計らって市場へ投入される。しかし、どれだけの利益を計上できるかは実際に出してみないとわからない。売れなければ在庫負担に苦しみ、売れすぎれば部品の確保や生産計画の見直しを迫られることになる。上下どちらへブレても、企業にとってはリスクだ。

MobileMe(旧.Mac)は、そのようなリスクを緩和するための有効手段だ。ユーザがAppleと年次契約を結ぶ「サブスクリプションサービス」であり、季節要因で売上が大きく変動することはない。サーバの運営コストは発生するが、在庫リスクを考慮せずに済む。AppleにとってMobileMeは、iPhoneとの連携などを含めた戦略商品である一方、経営の安定材料になるという意味でうま味のあるビジネスに違いない。

動画対応にDRMフリーとくれば、次はサブスクリプションサービスか? iTunes Storeの新サービスに要注目

もう1つ、Appleにはサブスクリプション化が可能なサービスがある。そう、iTunes Storeだ。ヒット曲が出るかどうかを、売上計画に織り込むことは難しい。すべてのユーザが毎月同じ数の楽曲を購入してくれるわけでもない。しかし、年または月単位の契約で聴き放題のサービスを提供すれば、売上の安定につながる。法的 / 技術的な問題はさておき、Appleはこれを狙うはずというのが筆者の読みだ。

気になるのは楽曲の期限管理だが、FairPlay(iTunes Storeで使用されるAppleが開発したDRM)での対応が最有力候補になるだろう。サブスクリプションサービス向けには、iTunes Storeからオンデマンドで再エンコード(128kbps程度?)された楽曲が提供され、iTunesやiPodに蓄えて利用するイメージだ。ストリーミング配信よりサーバへの負荷が低く、現行の配信 / 聴取システムに後付けしやすい点でも現実的と考えられる。

iPhone OS(OS X iPhone)

基本的にはOS Xのサブセットという位置づけのiPhone OS(OS X iPhone)だが、Carbonがサポートされないなど相違点は多い。当初はOS Xからの移植も容易と考えられていたが、独自のUIを生かした設計が求められるなど、いまや単なるサブセット以上の存在として認知されている。

世界で2,000万台規模と考えられるApp Storeの市場。売れれば売れるだけAppleの利益となるシステムだ

しかしiPhoneの場合、当面はハードウェアの強化に注目すべきではないだろうか。その理由が、2008年4月のP.A.Semi買収米IBMプロセッサ開発関連幹部の米Appleへの移籍だ。現在のiPhone / iPod touchには、サムスン電子製のARM互換チップが採用されているが、P.A.Semiの技術がそこへどのように反映されるかは要注目だ。また、OpenCL Embedded Profile(第305回 もっとわかりやすく「OpenCL」を解説する)に対応するグラフィックコアが搭載されるかどうかも、見どころといえる。

iPhoneが安定した売上確保の材料と目されているであろうことも、考慮しておかなければならない。iTunes Storeのクライアントとして機能するだけでなく、App Storeという世界規模の独占市場を押さえているからだ。特にApp Storeは今後一大収益源に成長するはずで、厳しい経済環境が予想される2009年において、AppleがこのiPhone / iPod touchを核としたエコシステムを最重点分野と捉えていても不思議はない。これを逆手にとると、App Storeで売れそうなタイトル、すなわちゲームを開発しやすい環境づくり(ハードの強化)に注力するのではないか、と読めるのだが。