まもなく発売のiPhoneですが、"ネタの小出し戦略"が奏功したのか、至る所で話題になってますね。連続通話時のバッテリー駆動時間が5時間から8時間へ強化、タッチスクリーンがプラスチックからガラスに変更、さらにはYouTube対応と、ユーザ側にとってはプラス材料ばかりなので、特に文句はありませんが……あ、ありました。日本での発売をよろしくお願いします。

さて、今回は「ATOK 2007」について。いわずもがな、多くのOS Xユーザに利用されている定番日本語入力システムの最新版だ。ジャストシステムさんのご厚意により、最新β版を試用する機会を頂戴したので、この場を借りてショートレビューと参りたい。

入力環境の強化

ATOK 2007では、新たに変換エンジン「ATOKハイブリッドコア」を搭載。変換精度の向上のみならず、前後の文節から意味を判断して候補ウインドウの並び順を動的に切り替える「最適候補提示機能」など、入力環境の整備に力点が置かれている。確認したところ、ATOK 2006 / 2007とも「こうどう」の変換結果は行動→講堂(辞書順)と表示されたが、2007では「講堂に集まれ」を変換したときの講堂は候補のトップに表示された(2006では2番目のまま)。

最適候補提示機能により、変換候補リストの表示順位が変わる

ら抜き / さ入れ表現の誤り、まちがえやすい表現や送りがなの誤りを入力段階でチェックする校正支援機能も強化された。2006では有効 / 無効を切り替えるだけだったが、2007では「校正支援モード」となり、有効時に「指摘する(強)」を選択すると、表現の洗練や用語・用例などいくつかにわかれているチェック項目をまとめて切り替えることが可能になった。

この「指摘する(強)」を選択すると、2007で加えられた「よく似た同音語の指摘機能」が有効になる(デフォルトでは無効化されているため)。ただしこの機能、同音異義語という広い範囲が対象ではないらしく、内臓と内蔵、食料と食糧など字面が似ているものにかぎられる。筆者が試したかぎりでは、かんそう(換装 / 完走)するなど、ごよう(誤用 / 御用)が少ないものについてはノーチェックらしい。

日付入力機能も強化され、先月や来月、今週/来週の○曜日、といった相対的な情報から日時を入力できるようになった。たとえば2006年6月の今、「せんげつ」とすれば「5月」が、「らいねん」とすれば「2008年」と「平成20年」が変換候補に現れる。新しく用意された日付入力パレットを利用すれば、カレンダーで確認しながら入力することも。ありそうでなかった機能なだけに、便利に使えること請け合いだ。

「きんよう」を変換すると、このように変換候補が現れる

ありそうでなかった「日付入力パレット」

Mac用語辞典がおもしろい!

我々OS Xユーザ、OS Xに関するあれやこれやを書くことが多い人間にとって、「マック用語辞典」の追加はATOK 2007最大のトピックかもしれない。Googleで検索するのも1つの手だが、用語1つ1つを簡潔に説明する文章はありがたい存在。用語の誤認識やズレた使い方で恥をさらさないためには、校正というほど大げさなものではなくても、サラリとチェックするくらいの気構えは必要だろうからだ。

基本的な使い方だが、用語を入力して変換する前に[TAB]キーを押すだけでOK。たとえば「Mach」を調べたい場合、「マーク[TAB]」もしくは「Mach[TAB]」と入力すると、「Mach≪マック用語≫」と表示され、省入力候補に「Mach」から始まる単語が一覧表示される。さらに[TAB]を押して「Mach≪マック用語≫」と表示された行にカーソルをあわせると、Machに関する説明が表示される、という流れだ。マック辞書の検索順位が低く設定されている場合、他の辞書の説明が表示されることもあるが、そのようなときは電子辞典メニューを操作すればいい。

筆者がテストしたのはβ版のため、収録されている用語は一部にかぎられるが、それでもなかなかの充実ぶり。語り出すと長くなるので説明は避けるが、NeXTやMachは当たり前、OpenDocもあればCyberdogもある。ピピンだってNuBusだって、CHRPだってある。かつてCEOを勤めたJohn Sculley氏の略歴も、バッチリ収録されている。

「NeXT[TAB]」で現れた候補たち。いまや立派にMac用語なのですね

目の付けどころが、チャープでしょ

このマック用語辞典、基本的にはASCII.jpのWebサイトで公開中の「デジタル用語辞典」そのままだが、内容の見直しが行われていることは高ポイント。前述のCyberdogを例にすると、Webでは「~OpenDocとともに開発中止となっている」で終わっているが、こちらの辞書ではLeopardの新機能「Web Clip」について言及されている(Cyberdogとは直接つながりのない技術だと筆者は思うが)。製品リリース時のブラッシュアップ具合が今から気になるところだ。