先日、大韓航空機のエンジン火災により、羽田空港発着便の欠航や遅延が相次いだことは記憶に新しいが、台風や雪の影響で空港を出発できず、余計な出費を強いられた経験があるという人も、少なからずいるのではないだろうか。
欠航や遅延の理由が航空会社に起因する場合は、状況により補償を受けられるが、悪天候など不可抗力な事態が理由の場合は、振替や払い戻しはできても、それ以外の補償は基本的に受けられない(対応は航空会社や状況により異なる)。そうした際に助けになるのが航空便遅延保険だ。一般的な旅行保険ではオプションとしてつけられる場合も多いが、航空便遅延保険を付帯したクレジットカードもある。
カードを紹介する前に、まずは簡単に航空便遅延保険について説明しよう。航空便遅延保険は乗継遅延、出航遅延、手荷物遅延、手荷物紛失の4項目に分けられ、それぞれ保険が適用される条件が定められている。細かい点は保険会社やカード会社によって異なる場合もあるが、基本的には以下の通りだ。
■乗継遅延
搭乗した航空便の遅延が原因で乗継できず、実際の到着時刻から4時間以内に代替便を利用できなかった場合
■出航遅延
出航遅延、欠航、運休、搭乗手続きの瑕疵で搭乗不能となり、出発予定時刻から4時間以内に代替便を利用できなかった場合
■手荷物遅延
搭乗した航空便に預けた手荷物が、航空便の到着後6時間以内に目的地空港に届かなかった場合
■手荷物紛失
搭乗した航空便に預けた手荷物が、航空便の到着後48時間以内に目的地空港に届かなかった場合
なお、台風や雪による遅延は保険が適用されるが、地震、噴火、津波、テロ、戦争などによる遅延は保険の対象外となる。補償を受けられるのは、遅延により生じた宿泊費、食費、衣類購入費(下着、寝間着など)、生活必需品購入費(洗面用具、カミソリ、クシなど)といった代金。いずれも社会通念上妥当とされる金額の範囲内、かつ規定の上限額までが補償される。なお、申請には領収書など支払いを証明する書類も必要だ。
MUFGカード ゴールド
できるだけ年会費を安く抑えたいなら、「MUFGカード ゴールド」が筆頭候補。年会費は2,057円で、初年度無料。リボ払いサービス「楽Pay」に登録し、年1回以上リボ払い手数料の支払いがあれば、次年度の年会費は1,028円になる。
航空便遅延保険は「国内渡航便遅延保険」という名称で、国内便のみ対象。所定の旅行費用を事前にカードで支払った場合のみ適用される利用付帯となっている。乗継遅延では宿泊費・食費が最高2万円まで、出航遅延では食費が最高1万円まで、手荷物遅延では衣類・生活必需品購入費が最高1万円まで、手荷物紛失では衣類・生活必需品購入費が最高2万円まで補償される。
旅行傷害保険は海外・国内ともに最高2,000万円を補償。海外は自動付帯で、前年のショッピング利用額に応じて補償プランが変動し、20万円未満の場合は最高100万円となる。国内はホテルまたは航空券の代金を事前に支払った場合のみ適用される利用付帯となっている。また、国際線利用時は、新千歳、成田、羽田、中部、関西、福岡、ハワイ・ホノルルの7空港でラウンジも利用できる。
Ferrari Fan Card
デザインも秀逸な「Ferrari Fan Card」は、年会費は3,240円ながら、海外・国内とも航空便遅延保険を付帯(海外便は自動付帯、国内便は利用付帯)。コスパにすぐれた1枚だ。乗継遅延では宿泊費・食費が最高2万円まで、出航遅延では食費が最高2万円(国内便は1万円)まで、手荷物遅延では衣類・生活必需品購入費が最高2万円(同1万円)まで、手荷物紛失では衣類・生活必需品購入費が最高4万円(同2万円)まで補償される。
旅行傷害保険は海外・国内ともに最高3,000万円を補償(海外は自動付帯、国内は利用付帯)。カードを持っていない家族も、最高1,000万円まで補償を受けられる家族特約付きとなっている。
Orico Card THE WORLD
より充実した補償を求めるなら、「Orico Card THE WORLD」も検討してほしい。年会費は9,800円だが、乗継遅延では宿泊費・食費が最高3万円まで、出航遅延では食費が最高3万円まで、手荷物遅延では衣類・生活必需品購入費が最高3万円まで、手荷物紛失では衣類・生活必需品購入費が最高10万円まで補償。なお、海外便は自動付帯、国内便は利用付帯となっている。
旅行傷害保険は海外・国内ともに最高5,000万円を補償(海外は自動付帯、国内は利用付帯)。家族特約はついていないが、家族カードは3枚まで無料で発行可能。また、国内16空港に加え、韓国・仁川空港、ハワイ・ホノルル空港のラウンジも利用できる。
セゾンゴールド・アメリカン・エキスプレス・カード
補償範囲の広さで選ぶなら「セゾンゴールド・アメリカン・エキスプレス・カード」。年会費は初年度無料、2年目以降1万800円で、航空便遅延保険は海外のみだが自動付帯となっている。乗継遅延、出航遅延はともに最高3万円まで補償。宿泊費、食費だけでなく、宿泊施設までの交通費、航空機以外の代替手段を利用した場合の交通費も補償対象となる。手荷物遅延では、衣類・生活必需品購入費を最高10万円まで補償。いずれも家族特約がついており、カードを持っていない家族も同様の補償が受けられる。
旅行傷害保険は海外・国内ともに最高5,000万円を補償(海外は自動付帯、国内は利用付帯)。こちらも海外・国内ともに最高1,000万円補償の家族特約付きだ。また、国内27空港、ハワイ・ホノルル空港のラウンジも利用できる。
今回紹介した4枚を含め、航空便遅延保険を付帯したカードは、いずれも年会費が必要となる。また、補償を受けられる範囲や金額は限られているので、航空便遅延保険のためにカードを作るというよりは、既に年会費のかかるカードを使っているなら、または作成を検討しているなら、航空便遅延保険を付帯したものを選ぶという考え方をしたほうがいいだろう。ゴールドカードでも航空便遅延保険を付帯していることは少ないので、飛行機に乗る機会が多い人は、比較材料のひとつにしてほしい。
公式サイトは以下の通り。
(※クレジットカードの用語などは以下を参照)
『シーンで選ぶクレジットカード活用術 (1) 最低限知っておいてほしい基礎知識』
※本記事で紹介したサービス内容は、消費税率8%を前提とした更新日時点の情報です。また、各サービスには一部対象外となるケースがあります。ご利用の際は公式サイトなどで最新の情報をご確認ください。
<著者プロフィール>
タナカヒロシ(ライター・編集者)
普段は音楽やエンタメ関係の仕事が多いが、過去に勤めていた会社の都合でクレジットカード本を作ったことをきっかけに、クレジットカード、電子マネー、ポイントなどに詳しくなる。以降、定期的にクレジットカードのムック本を編集・執筆。3月7日発売の『最強クレジットカードガイド2016 本当にトクするカードの選び方・使い方=写真=』(角川マガジンズ)では、編集統括および記事の大部分を執筆している。