日本のみならず世界で大ブームを巻き起こしたテレビ朝日系ドラマ『おっさんずラブ』(2018年)から5年、続編となる『おっさんずラブ-リターンズ-』が現在放送中だ(全9話 毎週金曜23:15~※一部地域除く)。『リターンズ』で新たにレギュラーメンバーに加わったのが、井浦新演じる和泉幸と、三浦翔平演じる六道菊之助。前半戦では、春田創一(田中圭)の初めての部下で情緒不安定な中途社員の和泉と、移動式おかかおむすび専門店「おむすびごろりん」の店主“菊様”こと菊之助は、春田と牧凌太(林遣都)の謎多き隣人として描かれていた。しかし、実は和泉は警察(公安)でタッグを組んでいた恋人の秋斗(田中圭・二役)を殺したテロ組織への復讐を誓い、組織が潜伏する土地の情報をつかむために「天空不動産」に入社したことが明らかに。心配して一緒に暮らしている菊之助は和泉に思いを寄せており、和泉は秋斗と瓜二つの春田に惹かれ始め……と、複雑な恋模様が描かれている。

今回は和泉を演じる井浦新が、『おっさんずラブ』キャスト陣が作品への愛を語るマイナビニュースのインタビュー連載第9回に登場。撮影現場の雰囲気や、田中圭・林遣都にあげたい“賞”を語った。

  • 井浦新

    和泉幸役の井浦新 撮影:泉山美代子

「大切な人を失い、悲しみ乗り越える役」への挑戦

――まずは、オファーを受けたときの気持ちを教えてください。

貴島(彩理)プロデューサーの作品にはこれまで三度参加させていただいたのですが、ここに来て『おっさんずラブ』か、と。貴島プロデューサーは、いつも僕に「大切な人を失ったとき、その悲しみをどう乗り越えていくのか」というテーマを背負う役どころを与えてくださるのですが、今回は『おっさんずラブ』の世界の中でそのテーマにどうアプローチしていくべきかを考えさせられました。

――ファンの多い作品の続編に参加するプレッシャーはありましたか。

何作も作り上げている完成されたチームなので、そこに入っていくとなると試されますし、何か残せるものがないと何のために加わったのかという話になりますし。勝手にハードルを上げているのかもしれませんが、時代に爪痕を残した素敵な作品だからこそ、「やったー!」と簡単に飛び込んでいけるものではなかったです。でもチームの皆さんが僕と三浦くんを温かく迎え入れてくれて、現場に入ると、スタッフ・キャストの皆さんの、作品への思いや愛の強さを感じました。

  • 井浦新

三浦翔平は何の心配もないとても心強い関係

――三浦さんとは共演経験がありますが、菊之助役が三浦さんで良かったと感じますか。

感じます。同じく貴島プロデューサーのドラマ『あのときキスしておけば』(21年、テレビ朝日)で初共演を果たして、僕にとっては同性とキスした初めての相手。NHK大河ドラマ『光る君へ』では親子役を演じますが、共演を積み重ねていくと、二人の中でまた新しいことにチャレンジしたいという思いが芽生えるのですごく楽しいです。何の心配もない、とても心強い関係です。

――そんな三浦さんが演じる菊之助と和泉の関係を、井浦さんはどう演じていますか。

和泉にとって菊は空気のような、いて当たり前の存在。菊の思いを何もキャッチできていないので、ふと目が合ったときに子犬のような顔でこっちを見ていても、「そういう人なんだな」としか認識していないんです。いつも見ていてくれる安心感に感謝しなきゃいけないことにも気付けていない、そう解釈して演じています。

  • 『おっさんずラブ-リターンズ-』より=テレビ朝日提供

田中圭と林遣都にあげたい賞

――春田を演じる田中圭さん、牧を演じる林遣都さんのすごいと感じるところや素敵なところに「〇〇賞」と名前を付けて、それぞれ賞をあげるなら、何賞をあげたいですか。

演者の芝居を一つも漏らさず全部受けている田中圭くんには「受けの美学賞」を差し上げます。いち視聴者として見ているときはそういう台本なのかなと思っていたのですが、一緒にお芝居をして初めて、ちょっとしたアドリブの一言も、その場で生まれた間も、小さな芝居も大きな芝居も、とにかく全部を春田として拾っていることに気付きました。たとえば和泉の場合は、マイクにも乗らないような小さな声でボソっとつぶやくことがあるのですが、それを春田がちゃんと拾ってくれることで、和泉の言葉が視聴者に届くということもあって。正に受けの美学です。「うえーい!」とちょっかいを出すような罪深いところは攻めの男に見えるんですが、実は春田は受けの達人なんです。素晴らしいです。

――続いて林さんは。

「やっぱり心を開かないで賞」ですね。共演は二度目で、この作品の撮影も後半に入ろうとしていますが、いまだに目を見て話してくれないし、なんなら話してくれません(笑)。

――それはなぜ……(笑)。

そういう関係なんです!(笑)

――ありがとうございます(笑)。では最後に、『おっさんずラブ-リターンズ-』後半戦の見どころを教えてください。

和泉の心情が少しずつアップデートされていきます。それに伴って僕も、和泉を表現する芝居に少しずつ変化を感じています。

――それは、恋心が秋斗から春田へ移り変わったことによる変化なのでしょうか。

その気持ちの変化と、そして菊との関係の輪郭がより鮮明になってきたとき、和泉がどう動いていくのか、どんなことを考えていくのか。そんな心の変化がこれから起きていきます。

――ありがとうございます。心の変化に注目させていただきます。

  • 井浦新
  • 井浦新
『おっさんずラブ-リターンズ-』(テレビ朝日系 毎週金曜23:15~※一部地域除く)
初代連ドラから5年の時を経て待望の復活を果たす『おっさんずラブ-リターンズ-』では、アラフォーになった春田創一(田中圭)、牧凌太(林遣都)の“夢の新婚生活”を描く。16日放送の第7話「君たちはどう生きるのかい」では、牧との結婚式を無事終えた春田のもとに荒井ちず(内田理央)が倒れたという連絡が。早速、保育園にちずの息子・吾郎(佐藤大空)を迎えに行くことに。一方、病院に付き添った牧と栗林歌麻呂(金子大地)は、ちずから兄・荒井鉄平(児嶋一哉)と舞香(伊藤修子)は子どもたちを連れて初めての海外旅行中なので、絶対に連絡しないでほしいと頼まれる。倒れてなお無理しようとするちずを心配した春田と牧は、入院中は吾郎を預かることに。しかし、帰宅した牧は、変わり果てた家の惨状に言葉を失う。思った以上に3歳児は“怪獣”で……。一方、体の不調を自覚し始めた黒澤武蔵(吉田鋼太郎)は、元妻・栗林蝶子(大塚寧々)に背中を押され、病院へ。そして春田への思いを封じ込めようと苦悩する和泉幸(井浦新)のもとには、六道菊之助(三浦翔平)が、任務中に負傷したと公安から連絡が。