大阪屈指の繁華街、・ミナミにはディープな店が集まるが、なにやら400年前の"サムライ"が今も密かに天下統一を目指し、朝方になると夜遊びをしている輩をバッサバサと刀で切り倒している店がある……。そんな噂を聞き、真相を確かめるべく夜のミナミへ繰り出した。その噂の場所は、「ペペロンチーノ」。心斎橋筋商店街から少し東に入った、新日本三ツ寺ビルの3Fにある。見たところ普通の店のように見えるが、ここで連日連夜、何が起こっているのだろうか?
扉を開けた途端に、侍の刀がキラリと光る
恐る恐る扉を開けると、いきなり馬の頭がっ! 「まさか、私もこんな無残な姿にされるのか? 」と恐怖に震えながらも声をかけると、「何奴っ! ? 」とばかりに、侍が刀(もちろん本物ではありません)を抜いて威嚇してきた。「まずいっ」と思い逃げ出そうとすると、後ろから「いらっしゃいませ〜」との明るい声が掛けられた。
こちらは、後藤"またべえ"隆博さんが店主を務める洋食店で、オープンして今年で408年目だそう。カウンター10席のこぢんまりとした店だが、後藤さんのキャラクターの甲斐もあって連日お客さんで賑わっている。又兵衛とは、店主の後藤さんの家系図に記されている実際の人物からとったそう。ちなみに、どうしてサムライの格好をしているのか尋ねてみたら「逆に、どうしてサムライではないのですか?」と質問され、ぐうの音も出ない筆者。まさに、後藤さんの中で男はサムライであることが当たり前なのだ。
剣さばきよろしく、フライパンさばきもサムライ級
そんな後藤さんだが、料理の腕前もサムライクラス。料理学校を卒業後、ホテルやレストランで腕を磨いたそうで、“深夜食堂”をテーマにちょっとした酒のアテから飲んだあとにしっかり食べられる料理まで、洋食を中心にしたメニューが揃っている。早速何品か食べてみることに。
まずはビールのアテに、ちょい盛り前菜(1人前税抜700円)を注文。鴨のスモーク、エビのマリネ、オリーブ2種、生ハム、ポテトサラダ、日替わりチーズ。内容は日により替わることもあるようだが、5、6種が盛り合わせで出てくる。 せっかくなので、後藤さんにもお酒を勧めたら「乾の杯! 」と侍言葉(?)で乾杯してくれた。
続いて、この店の名前にもなった「ペペロンチーノ」を頼むことに。シンプル・is・ペペロンチーノ(1人前税抜900円)とキング・オブ・ペペロンチーノ(1人前税抜1,200円)の2種類があり、キングはニンニクと鷹の爪がマックスに入っているそう。せっかくなのでキングを注文すると「御意っ! 」という快い返事が返ってきた。
そして登場して驚き、ペペロンチーノとは思えない赤さで、当然、激辛! なのだが、野菜と麺を一緒にゆでるため、野菜の旨味を吸収した麺の程よい甘さが、辛さを調和させてくれる。さらに、コンソメを使ったスープもタマネギなどの野菜の味がにじみ出ていて、これまたうまい。飲んだ客がパスタを注文することが多いので、ラーメンのようにすすりやすいようパスタはスープ(ソース)が多めなのだとか。ニンニクもたっぷりでパワー全快! ※翌日人とあう人はご注意を。
そして最後に、こちらの名物であるサムライス(1人前税抜1,000円)を。ふわふわとろとろ卵に継ぎ足して作られるドミグラスソースがたっぷり。そして、なんといっても特徴は、中のライス。
通常のオムライスはケチャップ味だが、こちらは赤ワインで味付け。ワインのほのかな甘さを残しつつ、程よい酸味でさっぱりと食べられる。ボリュームも申し分ないので、飲んだ締めなら2人でシェアしても十分なほど。
サムライといえば、おにぎりに味噌汁かと思いきや、まさかのイタリアン&洋食とは、これも開国による意識の変化なのか。夜の食事としてもいいが、朝9時までオープンしており、朝になればなるほどテンションが上がった後藤さんが見られ、まるでショーパブのような雰囲気に。大阪にお越しの際は、話のネタに、サムライに会いに来てはいかがだろうか。
●information
大阪府大阪市中央区心斎橋筋2-2-10
新日本三ツ寺ビル3F
19時30分~翌9時(ラストオーダー8時)
不定休