今では当たり前のようにあるものもすべて、過去の誰かの発明やアイデアがルーツ。広く展開するチェーン店だって、スタートアップの機運に満ちた発祥の店・1号店があります。身近すぎて気にも留めなかった「おいしいもの」のはじめて物語に、食いしん坊目線で迫ります。
1回目は、好きなパンでアンケートを行えば、たいていランキング上位に入るカレーパン。辛いものは苦手という人でも、カレーパンなら食べられるのではないでしょうか。
カレーパン発祥の地を訪ねる
カレーパンの形を思い出してみてください。普通の総菜パンと違って、サクサクの衣をまといカラッと揚げられた出で立ちです。すっかり見慣れていますが、これって総菜パンの中ではちょっと特別感がありますよね。この形にはヒミツがあるはず。
カレーパン発祥の地といわれる東京・森下の「カトレア」を訪ねました。
といっても、実はこちら、筆者はプライベートでも来たことがあるお店なんです。ただ、繁盛店のため、「あの……このカレーパンってどんな歴史があるんですか?」なんて聞ける感じじゃないんです。
カレーパンは焼きあがりの時間が決まっていて、その30分前ぐらいから行列ができはじめるのです。そうなると、カレーパン用レジと、カレーパン以外のレジが用意されます。
さて、取材当日。カレーパン焼きあがり時間の15時を目がけて訪問すると、もうすでに行列ができていました。また、どうやら常連さんから100個のカレーパン予約が入ったらしく、ものすごく忙しそう。そんな中、おそるおそる店主に話しかけました。
カレーパン誕生のヒミツを聞く!
次々に揚がるパン。慌ただしく立ち働く調理やレジのスタッフたち。次々に焼きあがるカレーパンを愛らしい袋に詰めながら、店主が答えてくれました。
――カレーパンはどのように誕生したんですか?
店主 「お店は明治10年創業。当時は『名花堂』といって、今とは違う場所にありました。カレーパンを発明したのは、創業者である私のお祖父さん。洋食ブームだったので、人気のカツレツとカレーを組み合わせたそうです。ほら、細長い形をしていて、カツレツに似ているでしょう? 昭和2年、そのカツレツ型のカレー入り揚げパンを『洋食パン』の名前で実用新案登録しました」。
――それがカレーパンのルーツですね。中のカレーはどんな味付けの工夫をしていますか?
店主 「『元祖カレーパン』は、家庭で作るようなカレーのイメージです。辛いものが好きな大人も満足でき、小さなお子さんにも辛すぎず、みんなが『おいしい、おいしい』と言って食べられるぐらいを目指しています。そして、『もうちょっと辛いのが食べたい!』という声に応えるために元祖カレーパンの辛口も作りました」。
――何度か売り切れで買えなかったことがあります。確実に買える時間を教えてください!
店主 「7時、11時、15時、17時に焼きあがりますよ」。
焼きあがり時間のちょっと前から行列ができはじめるので、各時間のちょっと前に来店すると良さそうです。また、材料の関係もあり、早い時間が確実かも。
元祖と辛口を食べ比べた
カレーパンはできたそばから売れていくので、自動的にみんなホカホカを持ち帰ることになります。ならば、一刻も早く温かいうちに食べちゃいましょう。公園でいただきまーす。
写真左が元祖、右は辛口。元祖はカツレツをイメージした横長型、辛口は丸型です。割ってみると、中のカレーの色がまったく違いますね。元祖は明るい黄色で、辛口は濃い茶色です。どちらもおいしそう。
味の感想。まず、皮はしっかりめの食感ながら薄め。中にはぎっしりとカレーが詰まっていて、空洞部分が見当たらない。元祖は野菜の甘さが特徴的で、スパイスの刺激がほとんどありません。カレーはトローリなめらか。うまい! 辛口はしっかりとスパイスを効かせてある。
カトレア
江東区森下1-6-10
営業時間:7~19時、祝日8~18時
休み:日・月曜