ハードウェア的には前回までで完成である。あとはモーションを入れて動かすだけだが、その前に、最初にやっておくべき設定について、いくつか補足説明をしておきたい。
ジャイロセンサー
ジャイロセンサーで姿勢を制御するには、HeartToHeart3のアナログボタンで、「リアルタイムミキシング」の値を変更する必要がある。この設定は目的(競技など)に応じて変更してもいいが、慣れるまでは京商が公開しているサンプル値を使用するといいだろう。
また電源投入時に自動実行されるスタートアップモーションの中で、筆者はジャイロの校正も行うようにしている。データ(スタートアップ.RCB)を添付するので、参考にしてもらいたい。このモーションでは、ゆっくりホームポジションに移行してから、AD1とAD2を校正している。腕が小さく動いたら校正完了だ。
以下のリンクからスタートアップ.RCBをダウンロードしてください
01.zip - スタートアップ.RCBの圧縮ファイル(zip形式:1.05KB)
加速度センサー
加速度センサーは重力の向きを検出できるので、これを利用して、自分が仰向けなのかうつ伏せなのかを判断することができる。転倒時、仰向けからは仰向け用のモーション、うつ伏せからはうつ伏せ用のモーションで起き上がる必要があるが、競技中には慌てて間違えることも多い。モーション中に条件分岐を仕込んでおけば、こういった間違いを回避することができるのだ。
ちなみに筆者のサッカー用モーション(起き上がり.RCB)では、仰向け・うつ伏せをそれぞれ判断した後で、そのどちらでもなければ(つまり起立した状態であれば)少ししゃがんだ姿勢をとるようになっている。こうすると同じボタンで、転倒時には向きを判断して起き上がり、立っているときにはしゃがんで踏ん張ることができる。
以下のリンクから起き上がり.RCBをダウンロードしてください
02.zip - 起き上がり.RCBの圧縮ファイル(zip形式:1.05KB)
基本姿勢の変更
先ほどの起き上がりモーションで、「しゃがんでどうするの?」と思う人もいるかもしれないが、敵味方が入り乱れているときには結構有効な手なのだ。体格に勝る相手が突っ込んできても、倒れずにかなり耐えることができる。同じ理由で、筆者は待機時の姿勢を少し低くするようにしている。これには特別な設定はなく、全てのモーションデータで、最後のPOSオブジェクトをその姿勢にするだけでオーケーだ。
サーボの特性変更
MANOIのサーボモーター「KRS-4024S HV」では、モーション再生中に動作特性を切り替えることが可能だ。変更可能な内部設定は「ストレッチ」(5段階)と「スピード」(3段階)だが、ここで注目するのはストレッチ(保持力)のほう(スピードは基本的に最速設定でいい)。この設定がサーボ内部に3セット保存されており、モーション内のPOSオブジェクトからそのうちの1つを指定することができる。
この設定値、デフォルトでは3セット全てに同一値が入っているが、筆者はKHR-2HVのときに「SET1が中間値、SET2がソフト、SET3がハード」と設定していたので、MANOIでも同様にした。これを、例えば歩行モーションでは、負荷の小さい上半身のサーボはSET2にして、負荷の大きい下半身はSET3にする、というような使い方をしている。同じモーションデータを使っていても、この内部設定が異なると動作が変わってくることもあるので注意したい。
HeartToHeart3の便利機能
HeartToHeart3でモーションを作るとき、ここで紹介する「LINK」機能を使うと便利だ。これは複数のサーボに対して一括した処理を行える機能で、例えば腰を低くしたいときには、足の付け根、膝、足首の各サーボの角度をそれぞれ変える必要があるが、この機能を使えばボタン1つでこれを一気に行うことができる。
HeartToHeart3を使っているうちに、このようによく行う操作が出てくるはずだ。そういったものをLINK機能で指定しておけば、モーション作りが非常に楽になる。まず大雑把にLINK機能の組み合わせでポーズを作っておいて、スライダーで微調整するといった使い方も可能だ。
もう1つ、便利な機能として紹介しておきたいのが変換機能だ。マニュアルに例として出ているのは左右反転するミラーリングだが、このほかにも、KHR-2HVのモーションをMANOI用に変換することもできる。KHR-2HVは多くの人がモーションを公開しているので、活用できれば便利だし、参考にもなる。ただし、KHR-2HVとMANOI AT01では肘関節の角度が90°異なるので、全く同じにはならない。変換してみて、不具合があれば修正する必要はあるだろう。