サークルクラッシャーってやつをご存知だろうか。同好の士が集まるいわゆる「サークル」において男たちにちやほやされ、思わせぶりな態度をとって人間関係を破壊していく女のことである。
「姫」などとも呼ばれるようで、最近ネットではこのサークルクラッシャー、略して「サークラ」の話題でちょいちょい盛り上がることがある。そろそろサークラをテーマにした漫画かアニメでも始まりそうだな……と思っていたら、ちょうどとある漫画誌で今月からオタクサークルの「姫」を主人公にした新連載がスタートしたようだ。
作品の方は読んでいないのでなんとも言えないが、とにかくこのサークルクラッシャーはネットでは叩き、もしくは揶揄の対象となる。彼女らが入るのは、男女比が9.5:0.5くらいのサークルで、漫画研究会やアニメ研究会などいわゆるオタク系のサークルが多い。女慣れしていなくて恋愛経験もゼロの男たちの間に女子が一人入ってきたら、そりゃあ盛り上がるのは仕方ないだろう。たとえ、よく見ると実は大してかわいくないとしても、だ。
サークルクラッシャーを叩く女性とは
で、この「実は大してかわいくないのに、男ばかりのサークルにいるからモテている」という部分が、同じ女性からの反発を生んでいるようなのだ。実際、周りにいる女性にこの話題を出したところ、全員が嫌な顔をした。ハッキリとは言わなかったが、どうやら「かわいくないのにちやほやされる」という部分に反発を感じているようだ。
その感情は確かにわかる。実際のモノと評価が吊り合っていなかったら、そりゃモヤモヤする。
しかしである。
そんな「サークラに反発する女性」に物申したい。
それが"戦略"ってやつなんじゃないですかね。例えばそこそこおいしいチョコレートがあったとして、でも国内で販売しても売れないわけですよ。なぜなら国内にはもっとおいしいチョコレートがいろんなメーカーからすでに発売されているし、ブランドも確立されている。この評価をひっくり返すことはかなり難しい。
容姿の評価もそう。学校や社会が「市場」だとしたら、一度構築された「この子はかわいい」「この子と付き合うことはステータスだ」というブランドを下克上するのはめちゃくちゃ困難だ。だったらどうするか。自分の評価を上げるためには、戦うフィールドを変えるしかないのだ。
そうやってサークラが選んだのが「男女比が偏ったオタク系サークル」なわけだ。つまり、サークルの姫を目指すのは、彼女らにとっての生存戦略なのである。レッドオーシャンで勝負して散ってしまうより、ブルーオーシャンでブレイクする戦略を俺は高く評価したい。
ま、男側からすれば、サークルをクラッシュされるのはたまったもんじゃないかもしれないけど、でもそれも戦略の一つとして見ればわかるんだよね。レッドオーシャンからブルーオーシャンにやってきた姫にしてみれば、このブルーオーシャンがいつなくなってしまうのか、とても不安なわけ。
さっきのチョコレートの例でいうと、せっかくチョコレートのない国で販売して大ヒットしても、いつ他の国からブランド力のあるチョコレートが入ってくるかわからないじゃん。で、入ってきたら確実に負ける。だってチョコレートのない国の民も、他国のチョコレートブランドのこと自体は知ってるんだから、もしそっちが輸入されてきたら比べられて負けてしまう。
じゃあどうするか。……安売りするしかないんだよね。それが唯一、ブランドチョコレートに対抗する安チョコレートの生存戦略だから。
ところが、人間の感情は当然チョコレートとは違うから、この安売りが揉め事の原因になり、結果としてサークルはクラッシュしてしまう。これは姫のせいでもあるけど、それを受け入れた男側にも問題があるから、責任としては五分五分だ。だから俺は姫が全面的に悪いとも思わないけど、男にも姫を糾弾する権利はあると思う。
だけど、女性が姫をボロクソに言うのは何か違う気がするんだよな。なぜかというと、その評価は「かわいくないのに、不当な評価を得ている」というギャップに対する不快感の表明であり、それって単なる僻みなんだよね。なんであっちの国ではアイツが売れてるの? って、そりゃ売れるに決まってるじゃん。競合商品がないんだから。
姫になる気もない、姫にすらなれない女が姫を叩くのはみっともないよ。
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