就職活動でワークライフバランスを重視する学生が増えています。特に、将来家庭を築き、子供を授かることを望む学生にとっては、仕事と子育てを両立できるかどうかは、男女ともに会社選びの重要なポイントではないでしょうか。

厚生労働省によると、女性の育児休業(育休)取得率が8割台で推移している一方、男性は17.13%(2022年度)にとどまります。近年上昇しているものの、男性の育休取得率を「25年度までに50%」とする政府目標には大きな開きがあります。

そうしたなか、男性育休の取得100%を掲げる企業もあります。男性の育児と仕事の両立を積極的に推進する企業にはどのような特徴があるのでしょうか。厚労省が公表する「イクメン企業アワード」を18~20年に受賞した企業の社員クチコミから、「男性育休」に関する投稿を分析。育休が取りやすい職場環境や企業風土について考えます。

男子学生の6割「育休を取って子育てしたい」

共働き世帯の増加に伴い、これから就職予定の男子学生にとっても育休の取得は関心事となっています。24年卒の学生を対象にした調査で、「育児休業を取って子育てしたい」と回答した割合は男子61.3%、女子63.2%となりました(※マイナビ「2024年卒大学生のライフスタイル調査」より)。政府も取得率向上に力を入れており、22年10月からは「産後パパ育休」として、育休の分割など柔軟な取得ができるようになりました。

ただ、個人差はあるものの、育休はある程度まとまった期間を休むことになります。不在中に同僚に負担をかけることを懸念し、「休みにくい」と感じるという声も見受けられます。実際に育休を取得した男性が休んだ期間や会社の方針、職場の理解などについて知ることは、会社選びの参考になるのではないでしょうか。

育休取得の実態は?

「イクメン企業アワード」の受賞企業に寄せられた社員クチコミに多く見られたのは、取得期間や育休取得に対する企業の姿勢に関する内容です。

「男性も3歳未満の子供がいる場合は育休1ヶ月とることになった。有休も働き方改革で取得しやすくなったと思う」(男性、積水ハウス)

「テレワークや有休消化が近年積極的に推奨されており、とても働きやすくなったように感じる。特に育児に関してはかなり優遇されており、直近では1か月間の育児休職が必須となった。男性でも育休を取得しやすい(むしろ取得が必須と言われている)環境ではある」(男性、江崎グリコ)

「男性社員の配偶者出産休暇(最低4日)や育休(5日まで有給)の取得が必須であり、組織の年間目標に含まれている。会社全体として、女性活躍やワークライフバランスを重視した企業であることがわかるかと思う」(男性、アフラック生命保険)

「会社として男性の育休取得を推奨していることを明言していて、管理職の男性で取得された実績もある。むしろ管理職の人が積極的に取得し、(取得を)促している」(女性、コーソル)

「休みやすい職場」の共通点はチームワークの良さ

育休の取得を促すには、制度面の整備だけでなく、休みやすい雰囲気づくりや職場全体で共通認識を醸成することも必要です。クチコミでは男性育休に限らず、働き方改革の影響もあり男女ともに「休暇をとりやすい」といった声が見受けられました。また、休職などで抜けたメンバーの仕事はチームでカバーする文化に対する評価や、「家庭を大切にすべき」と考える人が多い、といった声も寄せられました。こうしたチームワークの良い組織風土も「休みやすさ」に影響していることが考えられます。

「年13日は最低有休を取るよう推奨されており、有休が取りやすい環境。男性育休なども積極的に取るようにしており、チームで抜けた人の仕事をカバーする体制になっている」(男性、積水ハウス)

「育休や産休は男性含め取得できる風潮があり、働き方改革によって有給の取得率が向上するなど、残業時間に対しても会社としてかなり厳重に管理されている。深夜残業も申請が必要で、時短で働かれているママさんも多く、女性にとっても非常に働きやすい職場環境になっていると思う」(男性、双日)

「有給休暇取得率も社内に広く認知されており、徹底されている。また従業員に子育て世代も多く、比較的理解が得られやすい。男性の育休取得も積極的に推奨されており、1ヶ月間は有給で休めるなど、会社からの手厚いサポートを感じられる」(女性、江崎グリコ)

「女性管理職が多い。男性育休の取得も推奨している。在宅勤務や遠隔地勤務などの制度を業界でも比較的早く取り入れている。男女関係なく家庭を大切にすべきと考える上司が多い」(女性、パシフィックコンサルタンツ)

取得率向上には課題も

男性の育児と仕事の両立を推進する先進的な企業にも、男性が育休を取るまでの「ハードル」はあるようです。旧態依然とした社風が根強い企業や職場では、男性の育児参加に対する理解がなく、育休の取りにくさにもつながっていると考えられます。

「男性である程度のポジションを担っている人は、育休取得や家族看病や介護の申し出をしても上司がそれを渋る傾向がいまだにあると思う。就業上の措置がなぜ必要なのか説明するために、プライベート一日の流れを細かに説明する必要さえあるくらいだった」(男性)

「昔の風潮が残っており、男性の育児休暇などの取得に関しては消極的な印象」(男性)

「(ワークライフバランスの)融通は効くが、明らかに人手不足なので現場にしわ寄せがくる。男性社員の育休など、オープンに言っていい社風はあるものの、現場を知っているとなかなか言い出せない矛盾も感じる」(男性)

「育休とるだけ」にならない企業は?

一昔前に比べると、「家庭や育児は女性が担うもの」といった意識や先入観は薄れつつあります。男性も育児に関わることを当たり前と考える方が増えるなか、家庭も大切にした働き方ができるかどうかを重視する就活生は今後ますます増えていくことが予想されます。就活生のみなさんには、企業側の姿勢や取り組みが育休取得を促すだけの「掛け声倒れ」になっていないか、といった点で社員・元社員の声を参考にされることをおすすめします。

育休の取得は長い子育ての始まりに過ぎません。育児と仕事の両立は長期にわたって続くものです。自分の希望する働き方を実現するには、多様な価値観やキャリア形成を後押しする企業の取り組みなども大切です。さまざまな視点で情報収集を行うことで、より納得のいく就職活動ができるのではないでしょうか。