温泉にもいろいろな色がありますが、皆さんはどんな色の温泉が好きでしょうか。「無色透明の温泉にしか入ったことがない」。もしかしたらそんな人もいるかもしれません。人間に個性があるように、温泉にもさまざまな色、香り、肌触りの温泉があります。中でも、色つきのにごり湯は温泉情緒たっぷり。ほっこり気分になれること、間違いなしです!
色がつく過程はというと、一般的には、地中から湧き出た時には無色透明ですが、温泉水の中に入っている成分が空気に触れることによって酸化し、白くなったり赤くなったりします。さあ、あなたの好みの色を見つけに旅に出かけましょう。
赤~茶褐色 - よく温まる子宝の湯
有馬温泉(兵庫県)の「金泉」や伊香保温泉(群馬県)の「黄金(こがね)の湯」などは、赤~茶褐色の温泉。日の光に照らされると、ゴールドにもみえて、金運アップにも良さそうな色をしています。
なぜ、こんな色になるかというと、含まれる鉄分が空気に触れることによって酸化するから。鉄分が含まれているので、飲めば鉄欠乏症貧血に効果的。また、塩分も含まれているのでよく温まり、湯冷めしにくいのも特徴です。ともに、「子宝の湯」として有名で、伊香保神社、温泉神社は子授け・子宝祈願にご利益のある子宝神社でもあります。
同じ茶褐色のにごり湯をもつ、毒沢鉱泉神乃湯(長野県)は神様のお告げによって見つけられた温泉で、昭和12年(1937)頃は薬として売られていたこともある薬湯。湧出時は冷鉱泉ですが、温めることによって茶褐色のにごり湯となります。日の光の具合によっては写真のようなオレンジがかった黄金色に輝き、とても神秘的です。
湯の香りに包まれる! 王道・乳白のにごり湯
にごり湯といって一番に思い浮かぶのが、乳白のにごり湯ではないでしょうか。「ああ、温泉地にきたなぁ~」と実感できる、ぷ~んと漂ってくる、あの卵の腐ったようなニオイ。温泉から帰ってからもしばらくは服や身体に染み込んで、旅の思い出とともに、記憶に残る、硫黄の温泉。
硫黄泉のうち、遊離硫化水素を主成分とする酸性の温泉が、濃厚な白濁の湯となることが多いです。白く見えるのは、硫黄成分が空気に触れることでコロイド化(粒子が大きくなる)し、光の反射によりそう見えるから。
乳白のにごり湯といっても、ミルキーブルーだったり緑がかっていたりと、個性もさまざま。湯の峰温泉(和歌山県)の共同浴場「つぼ湯」などのように、一日のうち、何度か色が変わると言われる温泉もあります。「温泉は生きている」ということを実感できる温泉ですね。
一方、硫黄泉のうち硫化水素イオン濃度が高い月岡温泉(新潟県)などは同じ硫黄泉でも白濁ではなくエメラルドグリーン。個性豊かな温泉を楽しんで、好みの温泉を探してみてください。
都心部に多い、真っ黒の温泉
さて、温泉旅に出掛けようと思っても、なかなか出掛けられない人には、近所の温泉への立ち寄り入浴をオススメします。首都圏にお住まいの方であれば、黒湯の温泉へ出掛けてみましょう。
実は、首都圏は黒湯の宝庫。東京都大田区の銭湯は黒湯をもつところが17軒もあるし、浅草の「蛇骨湯」、東品川の「天神湯」、世田谷区の「そしがや温泉21」などでは銭湯料金で温泉に入ることができます。そのほか、神奈川県の川崎・横浜エリア、千葉県の湾岸エリア・成田・養老渓谷などにも点在しているので、近くで思わぬ名湯が見つかるかもしれません。
温泉が黒い理由は、太古の昔に埋もれた草や木の葉などの植物が地下水に溶け込んだもので、腐植質(ふしょくしつ)といわれる有機物が含まれることでこんなに黒い色をしています。
蒲田駅前のビジネスホテル、蒲田黒湯温泉「ホテル末広」は足元どころか1~2cm下は見えない透明度の低い真っ黒な黒湯。つるつるの感触で、よく温まります。最近は国際派になって外国人客も増えているのでしょう。入り口には「BLACK SPA」の看板も。立ち寄り入浴もできますので、仕事帰りにこの黒さを体感してみてはいかがでしょうか。
筆者プロフィール: 野添ちかこ
全国の温泉地を旅する温泉と宿のライター。BIGLOBE温泉で「お湯の数だけ抱きしめて」、「すこやか健保」(健康保険組合連合会)で「温泉de健康に」連載中。著書に『千葉の湯めぐり』(幹書房)がある。日本温泉協会理事、3つ星温泉ソムリエ、温泉入浴指導員、温泉利用指導者(厚生労働省認定)、温泉カリスマ(大阪観光大学)、温泉指南役(岡山・湯原温泉)。公式HP「野添ちかこのVia-spa」。