冷えは万病のもと。温めることは健康で長生きするためにいいことずくめです。"温熱を施すことによって免疫力は20~30%アップする"というような、うれしい研究データもあるくらいです。温泉の場合は家庭の浴槽以上に、含まれる温泉成分の影響で温熱効果が高まります。蒸気浴や砂浴、鉱泥浴といった入浴方法では、さらにプラスアルファの効果も期待できます。そこで今回は変わり種の温泉をご紹介。あなたはどの温泉に入りに行きたいですか?

蒸し風呂はデトックス効果満点(写真はイメージ)

箱むしやミストサウナ等、蒸し風呂の威力

今でこそ、入浴というと浴槽にお湯を張って湯船に浸かるスタイルですが、平安時代の寺院での施浴(庶民に風呂をふるまうこと)や江戸時代の風呂屋さんは蒸し風呂だったことを考えると、蒸し風呂は日本人にとって馴染み深いスタイル。現代においては電気のサウナが多いのですが、源泉の蒸気を使った「天然むし風呂」は室内が蒸気で満たされ、全身から汗が噴き出してきてデトックス効果満点です。いわば天然のミストサウナ。低温なので身体への刺激はマイルドなのが特徴です。

熊本県・杖立温泉の「箱むし湯」は、扉を開いて箱の中に座り、上部の窓から首を出すスタイル

長野県・湯田中温泉の「よろづや」は、登録有形文化財に指定された純木造伽藍建築の「桃山風呂」が有名。この大浴場の奥に、源泉を使った蒸し風呂があります。浴後は肌と髪がしっとり潤って、湯上がり美人のできあがり! 鼻やのどの通りも良くなるので、呼吸器系疾患にも効果的です。

湯治場やクアハウスなどで見かける「箱むし」は、蒸気に満たした箱の前面に観音開きの扉がついていて、その扉を開けて中に入り、腰を下ろします。首から下は蒸されて温かいのですが、頭は外に出ているので呼吸が楽です。秋田県の後生掛温泉や玉川温泉など、いくつもバリエーションのある浴槽をもつ湯治場に、箱むしが置かれていることが多いですね。

砂に埋もれてデトックス!

続いて紹介するのは、温泉熱で温められた砂に全身を埋めて、その熱で発汗を促す自然療法「砂むし温泉」や「砂場」。砂浜に高温の温泉が湧き、その熱に温められた砂を使う入浴法で、鹿児島県の指宿温泉や大分県の別府温泉などが有名です。

指宿温泉の「指宿白水館」で砂むし温泉。普段は汗をかきづらい筆者でも、入って数分でじんわりと汗が出てきました

指宿温泉の砂むしは、なんと元禄年間からといいますから歴史の古い健康法ですね。入り方は、浴衣のまま仰向けで寝っ転がり、スコップで砂をかけてもらい、じっとしているだけ。じわりじわりと温かさが全身に伝わり、10分もしていると顔いっぱいに汗をかきます。波の音を聴きながら、全身から汗とともに身体の中の老廃物を排出して、身も心もリフレッシュできます。

血流が促進され、深部体温も上昇して、神経痛や腰痛、脳卒中後遺症の疼痛(とうつう)、筋肉のこわばり、肥満などに効果的。その効果は、「砂むし温泉の効用は普通の温泉の3-4倍」(南日本新聞に掲載された記事をパンフレットに引用したもの)だそうです。

泉質はナトリウム‐塩化物泉で、とにかくポカポカとよく温まります。立ち寄り施設の「砂むし会館『砂楽』」のほか、指宿白水館、指宿いわさきホテル、指宿フェニックスホテルなど宿の中にも砂むしスペースがあります。

湯泥でつるピカ美人に!

最後に紹介するのは、温泉の泥です。泥に浸かるのは「鉱泥浴」といい、神経痛や関節痛などの痛みを緩和し、冷え性や婦人病、美肌に効果があります。中でも、泥パックは美容に興味のある女性に大人気。大分県の「別府温泉保養ランド」や「さくらさくら温泉」、栃木県の「湯荘白樺」などで、沈殿した泥や、升に貯めた泥を使って、泥パックが楽しめます。

「さくらさくら温泉」の泥パック。升から好きなだけ泥をとり、全身に塗ることができます

ミネラル豊富な泥を手や足、そして全身、顔にまで塗りたくり、しばらく放置してからお湯で洗い流すだけ。すると……皮脂の汚れが取り払われて、肌の色が1トーン明るくなり、つるりとした赤ちゃんのようなたまご肌が手に入ります。

さらに、患部に当てれば、温熱による血流増加と痛みの除去にも効果があるということで、鳥取県の三朝温泉病院では、「鉱泥湿布」体験もやっています(申し込みは各旅館)。腰痛や五十肩、股関節痛、膝関節痛、関節リウマチなどにいいそうです。また、温泉ミネラルを含む泥を、石鹸などに商品化して売店で販売しているところもありますので、お土産に買って帰れば女性によろこばれますよ。

いかがでしたでしょうか。いつもとはちょっと違った温泉体験をすることは、心身にとってリフレッシュになるはず。ぜひ全国の変り種温泉にチャレンジしてみてください。

筆者プロフィール: 野添ちかこ

全国の温泉地を旅する温泉と宿のライター。「宿のミカタプロジェクト」チーフアドバイザー。BIGLOBE温泉のほか、「すこやか健保」(健康保険組合連合会)で「温泉de健康に」連載中。著書に『千葉の湯めぐり』(幹書房)がある。日本温泉協会理事、3つ星温泉ソムリエ、温泉入浴指導員、温泉利用指導者(厚生労働省認定)、温泉カリスマ(大阪観光大学)、温泉指南役(岡山・湯原温泉)。公式HP「野添ちかこのVia-spa」