東京2020オリンピック競技大会では、史上最多となる33競技339種目の開催が予定されている。本連載では、イラストを交えながら各競技の見どころとルールをご紹介。今回は「トライアスロン」にフォーカスする。
トライアスロンは、スイム(水泳)・バイク(自転車ロードレース)・ラン(長距離走)の3種目を、この順番で1人のアスリートが連続して行う耐久競技。ラテン語の3を表すトライと、競技を意味するアスロンを組み合わせて名付けられた。
オリンピックでは、スイム1.5キロメートル、バイク40キロメートル、ラン10キロメートルの、合計51.5キロメートルで着順を争う。この設定距離は、オリンピック・ディスタンス、またはスタンダード・ディスタンスと呼ばれている。男子のメダリストは1時間45分ほど、女子のトップは2時間を切るスピードで駆け抜けてゆく。
トライアスロンは、1974年に初めてアメリカで競技大会が開催された比較的新しいスポーツである。シドニー2000大会から正式競技となり、男女とも実施されている。東京2020大会では、新種目として男女による混合リレーが行われる。
選手同士の駆け引きやトランジションにも注目
トライアスロンは、経験と戦略のスポーツとも言える。3つの種目それぞれの能力の高さはもちろん、バランスやペース配分が大切だからだ。スイムから先行してランで逃げ切ったり、速いランニングタイムで後方から追い上げたりと、各選手が得意とする種目で、いかに他の選手と差をつけられるかが見ものだ。
また、競技中スイムからバイク、バイクからランへと種目を転換するトランジションも、注目すべきポイントの一つ。トランジションエリアで、次の種目に合わせたウェアに着替え、シューズを履き替えるが、この時間もタイムに含まれる。そこで選手は素早くスムーズに着替えねばならず、ウェアやシューズ、ヘルメット、サングラスなど用具の配置にも各自工夫を施して、無駄な動きを省く。例えば、少しでもタイムを縮めるために、バイクシューズをあらかじめペダルに付けておき、走りながらシューズを履くほどだ。トランジションは、トライアスロンの第4種目と言われることもあるほど、重要なポイントなのだ。
さらに、ドラフティングと呼ばれる戦術にも注目したい。空気抵抗の軽減を図るため、バイクで先行する選手の直後を走って風よけとし競技を有利に展開する戦術で、どちらが先に出るか。お互いの駆け引きに、観ている者の緊張感も高まる。
そしてランでは、選手はフィニッシュが近づくにつれて徐々に加速し、スパートする。長距離での勝負ではあるが、最後は僅差となることもあり、フィニッシュラインを越えるまで目が離せない。
イラスト:けん