東京2020オリンピック競技大会では、史上最多となる33競技339種目の開催が予定されている。本連載では、イラストを交えながら各競技の見どころとルールをご紹介。今回は「テコンドー」にフォーカスする。
約2,000年にわたり、朝鮮半島では様々な武術が研鑽(けんさん)されてきた。そうした中、20世紀初頭、テコンドーは韓国内で実践的に広く普及する武術となり、やがて韓国の国技として国際的に普及が進められた。
テコンドーは、ソウル1988大会とバルセロナ1992大会で公開競技として実施され、シドニー2000大会でオリンピック正式競技として採用されて以降、毎大会実施されている。
現在、テコンドーは200を超える国と地域で行われ、競技人口は推定8,000万人とされている。5つの大陸連合(アフリカ、アジア、ヨーロッパ、パンアメリカ、オセアニア)のもと、世界で最も人気のあるスポーツの一つとなっている。
回し蹴り、横蹴り、多様な蹴り技が見もの
テコンドーの魅力はなんといっても華麗でダイナミックな蹴り技の応酬だ。前蹴り、横蹴り、回し蹴り、後ろ回し蹴りなど、蹴り技の種類は実に多彩。素人目には何が起こったのかわからないようなスピードで、さまざまな角度、方向からの蹴り技が次々と繰り出される。
時には飛んだり宙を回ったり、アクロバティックな動きは見る者をとりこにする。かかと落としや後ろ回し蹴りなどの豪快な大技が決まると、会場から大歓声が沸き起こる。
ロンドン2012大会からは、技術の有効性や打撃の強さを公正に判定するために、電子センサーが付いたプロテクターやヘッドギア、ソックスなどを使用するPSS(Protector and Scoring System)が導入された。
足技に象徴されるテコンドーだが、手技も存在している。顔面へのパンチは禁止されているため、手による攻撃は胴プロテクターへの攻撃のみとなる。
テコンドーは顔や胴に防具をつけており、直接当てて攻める「フルコンタクト」。思い切り力を込めて当たり合うため、迫力があり、観戦者もエキサイトしてくるのである。
ポイントを積み重ねて勝ちが決まることが多いので、どんな技が何ポイントなのか知っておきたい。基本的にプロテクターに攻撃が当たることでポイントとなる。頭部への蹴りは3点、回転が加わると5点だ。また、胴部への蹴りは2点、回転が加わると4点、胴部へのパンチは1点となる。倒れた後、審判により8カウントまでにファイティングポーズをとれないとKOになるがほとんどの試合はポイント差で勝敗が決まる。
また、逃げてばかりで消極的な態度など、減点となる反則も存在する。減点になった場合は、相手選手に1点与えられる。10回反則をもらうと試合はその時点で終了となり、仮に相手よりポイントが上回っていたとしても、相手選手の勝利となる。これらの知識も得ておくと、試合をより面白く見ることができる。
さらに新しい技術的取り組みとして、東京2020年大会ではビデオ判定として4Dリプレイシステムによる映像判定が導入される。コートの周りを360度囲うように多くのカメラを設置することで、あらゆる角度から選手の迫力満点のアクロバティックな技を見ることができる。また、最先端の技術により開発された素材を用いた新ユニフォームも披露される予定である。
イラスト:けん