東京2020オリンピック競技大会では、史上最多となる33競技339種目の開催が予定されている。本連載では、イラストを交えながら各競技の見どころとルールをご紹介。今回は「ゴルフ」にフォーカスする。
状況に応じた攻略法とメンタルの勝負が見どころ
ゴルフは、クラブという道具で静止したボールを打ち、直径108mmの小さな穴(カップ)まで、いかに少ない打数で入れられるかを競う競技。オリンピックではパリ1900大会とセントルイス1904大会の2回開催された後は競技から外れていたが、リオデジャネイロ2016大会で112年ぶりに復活した。
競技は1ラウンド18ホールで構成され、選手は4日間で4ラウンド72ホールをプレーし、合計の打数が少ない順に上位となる。各ホールには「3打」、「4打」、「5打」など規定の打数が設定されており、この打数と等しい打数でカップに入れることを「パー」という。また、規定の打数より1打少ないことを「バーディー」、2打少ないことを「イーグル」、逆に1打多いことを「ボギー」、2打多いことを「ダブルボギー」などという。18ホールのゴルフコースのパーは72が一般的。72より1打少ない71で終わると「1アンダー」、2打多い74で終わると「2オーバー」となる。
オリンピックには、国際ゴルフ連盟(IGF)が発表した世界ランキングをベースに、男女それぞれ60名が出場する。
ゴルフは、競技場となる各ホールにより距離や地形が大きく違う点が特徴だ。ティーインググラウンドと呼ばれるスタート地点からパッティンググリーンまでの間には、芝が短く刈られた「フェアウェイ」エリア、「フェアウェイ」の左右には芝が長く伸びた「ラフ」エリア、池やバンカー(砂地のくぼみ)などの障害物エリアの他、地形のアップダウンがあったり曲がっていたりと、コースはさまざまでそれぞれ難易度が変化する。
パッティンググリーンの表面の芝は最も短く刈られており、ポテトチップのようなうねりがある。傾斜もホールごとに異なり、最も神経を使うエリアである。
天候もプレーヤーを大きく悩ます。雨による地表や芝の状態、風の強さや方向など、同じコンディションは二度とないところがゴルフの面白さであり、奥の深いスポーツと言われるゆえんでもある。その面白さから、世界中の老若男女が「生涯スポーツ」として楽しんでおり、大勢の愛好者が存在する。
打つ道具であるクラブは最大14本まで持ち歩ける。広大な自然の中に打つドライバーショット(ボールをより遠くに飛ばすことができるクラブ)の迫力はゴルフの醍醐味でもある。また、遠くまで飛ばせるドライバー等のウッド類、正確性を重視するアイアン類、ターゲットとなるパッティンググリーンで使うパターなどそれぞれ用途が異なる。
ウッド類やアイアン類は、ボールを打つ面の角度が異なる。例えば、アイアンでいうと3番アイアンは角度が直角に近いので低い弾道で遠くに飛ばせるが、角度があるピッチングアイアンは高く上がるので、距離は出ない。プレーヤーが状況に応じてどのクラブでどんな攻め方をするか、1打1打の判断力とテクニックが競技の見どころでもある。
また、メンタル面の強さが勝敗を大きく左右するスポーツでもあり、各選手が重要な場面で重圧に打ち勝てるかどうかも注目ポイントだ。
審判員が立ち会わないということもゴルフの大きな特徴だ。これは、ゴルフがフェアプレーを重んじ、「ゴルファーはみな誠実であり、故意に不正をおかす者はいない」という基本的な考え方に基づいている。また、ゴルフ規則書に規定されている罰則は、ゴルフ規則を知らなかったり、過失によってその処置を誤ったりしたプレーヤーに対して、競技全体の公平さを図る観点から決められている。
イラスト:けん