東京2020オリンピック競技大会では、史上最多となる33競技339種目の開催が予定されている。本連載では、イラストを交えながら各競技の見どころとルールをご紹介。今回は「馬術」にフォーカスする。
飛越の迫力や華麗な演技が見どころ
馬術は、動物を扱う唯一のオリンピック競技であり、男女の区別なく同じ条件で実施されることが特徴だ。人馬ペアで競技を行うため、選手と同様に騎乗馬の資質も問われる。
オリンピックでは、コース上に設置された大きな障害物を飛び越える際のミスの少なさと走行時間で競う「障害馬術」、ステップなどの演技の正確さと美しさを採点する「馬場馬術」、障害と馬場の2つにダイナミックなクロスカントリー走行を加えた「総合馬術」の3種目が行われる。
個々の人馬のパフォーマンスは個人成績としてカウントされ、各国チーム3人馬の成績を合計したものが団体成績となる。馬術競技はパリ1900大会で初めて実施され、ヘルシンキ1952大会で軍人以外の男子および女子の参加が認められるまでは、男子の軍人のみが参加する競技だった。
選手は規定によって燕尾服(えんびふく)や乗馬服、シルクハットなどの帽子を着用し、優雅さが漂う独特の雰囲気のもとで競技が行われる。
馬場・総合・障害、3つの種目に共通する見どころは、拳(手綱)・脚・体重の移動などにより馬へ細かい指示を出す選手の技術と、それに応える馬の能力だ。選手と馬の信頼関係によるコンビネーションが見事な飛越や演技を生み、迫力と華麗さに目を見張る。
馬場馬術
馬場馬術は、20m×60mの長方形のアリーナ内で、馬の演技の正確さや美しさを競う規定演技と、必須の要素で構成し、音楽をつけて行う自由演技がある。なんといっても、よく調教された馬の、まるで自ら楽しみながらダンスを踊っているかのような躍動感が見ものだ。選手の指示に従って、リズムよくしなやかにステップを踏んだり、図形を描いたりする見事な演技と芸術性に舌を巻く。選手はなるべく小さく馬に合図を送り、馬はそれに応えて正確かつ華麗な動きをする。文字どおり人馬一体の妙技に注目しよう。
総合馬術
総合馬術は、馬場馬術と障害馬術にクロスカントリーを加えた3種目を同じ人馬のコンビで行い、合計減点の少なさを競う複合競技。馬場馬術、クロスカントリー、障害馬術の順に行われる。人馬ともに総合的な能力やテクニックが求められ、さらに体力や精神力が必要だ。3日間かけて行われるため、馬のコンディションを良い状態に保つようケアすることが重要となる。
メインとなるクロスカントリーでは、竹柵、生垣、水濠など40を超える障害物が起伏に富んだコースに設置される。その6km近いハードなコースを10分ほどで駆け抜ける。スピードは時速30km以上になり、迫力満点だ。最短距離を攻めればタイムは早くなるが失敗するリスクが高く、安全策をとればその分タイムがかかる。選手がどのようなコース取りをするのかも見どころだ。
障害馬術
障害馬術では、競技アリーナに設置されたさまざまな形状の障害物を、決められた順番どおりに飛越し、走行する。障害物の落下や、馬が止まったり横に逃げたりする不従順などのミスなく、規定タイム内にゴールすることが求められる。
障害物の大きさは、最大で高さ160cm、奥行き200cmのものもあり、タイミングが乱れるとうまく飛び越えることができない。選手の役割は、ぴったりの踏み切り位置に馬を誘導すること。選手と馬の息の合ったジャンプが、最大の見どころだ。
イラスト:けん