東京2020はさまざまなスポーツをお子さんとともに楽しめるまたとないチャンスです。そこで、子どもの運動能力向上に詳しいスポーツトレーナー・遠山健太が各競技に精通した専門家とともにナビゲート! 全33競技の特徴や魅力を知って、今から東京2020を楽しみましょう。今回は「競歩」! 競技解説は、育成年代を中心とした競歩種目の指導者としても活躍する三浦康二さんです。
競歩の特徴
歩行はヒトをヒトたらしめる運動といっても過言ではないほど人間にとって根源的な運動といえます。その運動を陸上競技の種目として競技化、スポーツ化したのが競歩です。その五輪での歴史は1906年アテネ中間大会に男子のみの種目として始まり、種目距離の変遷を経て1956年メルボルン大会から現在までロード種目の20kmと50kmの2種目で行われています。女子では1992年バルセロナ大会に10kmの1種目のみで始まり、2000年シドニー大会から20kmとなっています。そのほかU20世界選手権や国内の大学生などの大会ではトラック種目10,000mの距離で行われ、高校生の大会では5,000mで行われています。
陸上競技のルールでは、競歩を①両足がグラウンドから離れることなく歩く(ロス・オブ・コンタクトにならない)、②前脚は接地の瞬間から垂直の位置になるまでまっすぐに伸びている(ベント・ニーにならない)、③いずれも目視(肉眼)で判定する、と3つの点で定義しています。ロード種目では1周1kmから2kmまでの周回コースで行われ、1周に5名から8名の審判が配置され、選手のフォームがルールに反してないかを判定します。
競歩を観戦するときのポイント
競歩種目のスピードは、世界記録レベルだと男子20km競歩では1kmおよそ3分50秒、男子50km競歩で1kmを4分20秒、女子20km競歩では4分15秒のスピードですが、これはフルマラソンでいえば3時間を切るようなペースで競われています。そのようなペースで、20km競歩では男女とも1時間20~30分、50km競歩では3時間30~40分の長時間にわたって競われるほか、先ほどご紹介したルール、「ロス・オブ・コンタクト」や「ベント・ニー」にならないように歩く高度なテクニックもスピード以上の見所になります。
また、マラソンなどのロード種目と違い、競歩は1周の距離が比較的短い周回コースで競われますので、スタジアムで行われるトラック種目のように1周ごとのペース変化を追いかけることができます。加えて、コース上を歩く選手と観客の距離が非常に近く、選手の息づかいや汗のしぶきを間近に見ながら観戦できます。そのほかコースサイドの数か所に設置される掲示板には各選手が審判から受けたレッドカードの枚数が選手のナンバーとともに大きく表示されるので、判定結果を追いかけるのも観戦のポイントです。
東京2020でのチームジャパンの展望
陸上競技では各種目1か国3名まで出場可能ですが、男子20km競歩では、山西利和選手、池田向希選手、高橋英輝選手の3名が内定しています。山西選手は2019年世界陸上での優勝者、池田選手は2018年世界競歩チーム選手権個人優勝者で、それぞれ世界タイトルを手に東京2020に臨みます。高橋選手も山西、池田選手に勝って2019年まで日本選手権を5連覇しており、2人の世界チャンピオンに劣らぬ実力者として3名とも金メダルの有力候補といえます。
男子50km競歩では、鈴木雄介選手、川野将虎選手の2名が内定しています。鈴木選手は2019年世界陸上の優勝者で、川野選手は鈴木選手が2019年4月にマークした日本記録をその6か月後に大幅更新して代表内定しました。そのため、2人とも有力な金メダル候補といえますが、3人目の代表は2021年4月に行われる日本選手権50km競歩で競われます。その候補も多士済々ですが、2016年リオ五輪銅メダル、2017年世界陸上銀メダル、2018年世界競歩チーム選手権個人金メダルの荒井広宙選手、2017年世界陸上銅メダルの小林快選手、2018年世界競歩チーム選手権個人銀メダルの勝木隼人選手、2018年世界競歩チーム選手権銅メダルの丸尾知司選手など、これらの選手も誰が内定しても金メダル候補といえます。
女子20km競歩では、岡田久美子選手、藤井菜々子選手の2名が内定しています。岡田選手は2019年世界陸上6位で、藤井選手は同じく7位に入っています。2人ともに2018年から急激に記録を伸ばしており、メダルを十分に狙える位置にいるといえます。
遠山健太からの運動子育てアドバイス 「競歩」を始めるタイミング
競歩という種目は観れば観るほど奥深いです。一回フォームを教えてもらってもそう簡単にできるものではありません。「歩く」という文字が入っていても早歩きとは違うので、子どもにフォームの説明をする際に最終的に動画を見てもらいました。小学生で体験することが難しい種目の1つですが、ウォーキングであればはいつでも始めることはできます。コロナ禍直前でも子どもの活動量が減ってきていると報告されていましたが、最近その傾向は強いかもしれません。運動不足の方はこの機会に家族でウォーキングから始めてみませんか。