東京2020はさまざまなスポーツをお子さんとともに楽しめるまたとないチャンスです。そこで、子どもの運動能力向上に詳しいスポーツトレーナー・遠山健太が各競技に精通した専門家とともにナビゲート! 全33競技の特徴や魅力を知って、今から東京2020を楽しみましょう。今回は「トラック短距離・ケイリン」! 競技解説は、トップクラスの競輪選手のサポートを行ってきたパーソナルトレーナーの鑄山和裕さんです。
トラック短距離・ケイリンの特徴
自転車競技のトラック短距離には「スプリント」と日本発祥の「ケイリン」がありますが、ここでは「ケイリン」についてお話をしましょう。
1948年に誕生し、公営競技「競輪」として全国各地で開催されています。2000年シドニー五輪から正式種目となり、2008年北京五輪にて日本の永井清史選手が3位入賞しました。
ちなみに、日本の「競輪」はプロスポーツの中では最も選手数が多いことでも知られています。約2,300名の選手がおり、それぞれが成績によって6階級に分けられています。階級上位からSS級9名、S級1班211名、2班450名、A級1班520名、2班520名、3班約440名。2012年からは女子選手によるガールズ競輪もスタートしました。競争路(バンク)は333m、440m、500mとあり、五輪で使用する250m走路と大きく違います。
また、日本で行われている「競輪」は、9人(ガールズは7人)で行う競技。各選手が出身地域などでラインと呼ばれるチームを作り、それぞれが有利になるようなレース運びをします。たとえば、登録地域が関東3人、中部3人、近畿3人であれば、それぞれのチームとしてレース運びをします。ちなみに女子選手によるガールズ競輪はインターナショナルルールのため、ラインは存在しません。
トラック短距離・ケイリンを観戦するときのポイント
五輪種目である「ケイリン」は、国内で行われている「競輪」と違って、完全に個人種目です。予選上位2名が準決勝へ進み、準決勝では上位3名が決勝へ進みます。また、予選で敗退した選手による敗者復活戦もあり、再起をかけたチャンスもあります。
周回は8周(2,000m=250m×8周)で、先頭誘導車がペースメーカーとして先頭を牽引します。一番インコースでスタートした選手は、最初の周回は先頭誘導車の後を追走しなければなりません。そのあとは各選手達がお互いを牽制しあいながら、ベストポジションを取り合います。250mのトラックでは、この位置取りによって勝敗が大きく左右されるため、観戦ポイントとしての見所となります。
残り2周半になると、ペースメーカーがトラックから待避します。ここから一気にゴールに向かっての全力スプリントが始まります。残り600m強の距離を、各国選手達がもがきながら走り抜く姿は圧巻です。ここは最後の観戦ポイントとなりますが、かなりのスピードレースになるので見応えがありますね。
東京2020でのチームジャパンの展望
「ケイリン」は日本発祥とはいえ、日本人選手たちは外国選手たちとのフィジカル(身体能力)の差がどうしても出てしまうこともあります。しかし、ナショナルチームに、フランスやロシア、中国などのチームを世界トップレベルに押し上げた実績を持つブノワ・ベトゥ氏が就任し、改革を進めたこともあり、日本選手も世界で通用するフィジカルを獲得してきました。
2019年アジア選手権で小林優香選手(ガールズ競輪選手)が優勝、2019年世界選手権にて新田祐大選手(競輪選手)が2位、そして、2020年にはトラック世界選手権大会で脇本雄太選手(競輪選手)が銀メダルを獲得しました。
いまや世界で戦えるレベルにまで成長している日本人選手たち。日々のトレーニングや練習も常に科学的根拠に基づいた内容で行っています。東京2020では、その力を存分に出し切って、日本発祥のケイリンでメダル獲得の活躍をぜひ期待したいですね。
遠山健太からの運動子育てアドバイス
15年ほど前、小田原競輪場すぐそばの高校のトレーニング指導に行っていたことがあります。当時、競輪場は環境的に子どもが行くような場所ではなかった記憶があります。昨年、たまたま仕事の付き合いで競輪の日本選手権を観にいく機会がありました。ゴールデンウィーク中ということもあってか会場は出店もあって大いに賑わっており、家族連れがとても多く、環境の変化を感じました。競輪のレースは速さを競うというより、駆け引きの要素もあり、子どもに理解してもらうのは難しいかもしれませんが、トップスピードに乗って順位争いが激化する終盤はかなり盛り上がります。会場によっては競輪場のバンクを親子で走ることができるイベントもあります。一度親子で競輪場に足を運ぶのも良いかもしれませんね。