東京2020はさまざまなスポーツをお子さんとともに楽しめるまたとないチャンスです。そこで、子どもの運動能力向上に詳しいスポーツトレーナー・遠山健太が各競技に精通した専門家とともにナビゲート! 全33競技の特徴や魅力を知って、今から東京2020を楽しみましょう。今回は「サッカー(男子)」! 競技解説は、サッカーの競技経験歴8年で、トレーナーとして活躍する田島悠将さんです。
サッカーの特徴
サッカー競技とは、国際試合などを行う厳密なサッカーフィールド(縦90~120m、横64~75m。五輪の場合、105m×68m)で、前半・後半それぞれ45分+アディショナルタイム※を経過後、相手陣地にあるゴールに多くボールを蹴りこんで得点を獲得したチームの勝ちという競技です。
※日本ではロスタイムと言っていたが、2010年7月16日、日本サッカー協会もロスタイムというネガティブイメージの言葉から、国際的に使われていたアディショナルタイムというポジティブイメージの言葉に切り替えた
時間内に悪質な行為(ファウル・ハンド)をすると、イエローカードという警告カードをもらいます。ただし、それほど悪質なものでなければカードはもらいません。試合中の最初のファウルがその試合を裁く審判のファウル基準になることが多いため、選手たちはそれで判断して、どこまでのファウルをしてもよいのかを測ることが多いようです。同一試合中に同じ選手が2枚もらうとレッドカードという退場処分を受けます。
オフサイドという反則もあります。簡単に言うと、サッカーでは攻撃しているチームの選手が、相手守備チームの一番後ろにいる選手(ゴールキーパーを除く)よりゴールに近い側でボールを受けてはいけないというルールがあり、それを破るとオフサイドになります。最近では、テニスでよく見るビデオ判定も取り込まれていて、オフサイドはもちろんのことゴールの瞬間も判定しています。
サッカーを観戦するときのポイント
まず、前半の5分間でボールの移動スピードに慣れてください。次に、ボールを持っている選手はもちろん、ボールを次に受けようとしている選手(だいたい手を挙げていたり、ボールを持っている選手が見ている先にいる人)に注目してみます。ボールを受けるまでに前後左右、あるいは斜めに動いて、マークをしてくる相手選手からどうにか離れてフリーな状態で受けようと必死なはずです。ここまでの動きに、前半の15分ほどで慣れましょう。
ゴールがフィールドの真ん中にあることから、基本的には両チームともに、真ん中に人がいることが多くなります。攻撃側のチームは、守備をしている相手チームを真ん中のエリアからサイドや前のめり(攻撃チーム側)に移していこうと、毎秒必死に考えてドリブルやパス、遠めからのシュートを駆使しています。この部分にチームごとの戦術が表れます。 ここで、国ごとの攻め方の違いを楽しめるようになると、サッカーのおもしろさがわかってきます。「得点がなかなか入らなくておもしろくないな」という段階を脱して、深みが出てきて楽しめるようになってくるのです。
最後に注目して欲しいのは、審判団の足の速さや持久力の豊富さです。主な審判団には主審1人、副審2人がいます。主審は全フィールドそしてボール付近やボールに関わろうとしている選手たちすべてを見る必要があるため、常にマラソンをやっている状態です。
副審はサイドラインを半分で担当して2人が対角線に配置されています。その2人は、先に説明した、オフサイドを見るためにトップアスリートとほとんど同じスピードでスプリントをしないといけません。オリンピックサッカーの場合、オーバーエイジ枠があるもの、基本は23歳以下のトップアスリートで構成されていますから、その大変さは想像がつくと思います。ちなみに、国際審判団はその年の1月1日時点で45歳以下です。もちろん、ヨーイドンではついていくのは難しいため、試合展開を先読みしながら進まないと追い付けません。この審判団の動きにも注目してください。
東京2020でのチームジャパンの展望
監督はトップチーム代表でもある森保 一(もりやす はじめ)監督です。サンフレッチェ広島時代に日本人最多優勝監督となった名将です。ここ最近、海外に活動の拠点を移している選手も多く、U22のオリンピック代表候補選手の中にも海外組はいます。日本国内のJリーグでは経験することが難しいトップレベルの選手との練習やサッカー観を、年齢が小さいうちから経験して、それを日本代表に持ち込んでいます。そのため、体格的、世界ランク的に不利な相手に対しても、戦い方の引き出しがとても多いように感じます。試合中、監督からの指示はありますが、選手個人個人で試合展開を考えることができているため、プレー中やプレーが切れているときの話し合いも多く見られ、選手が納得した状態でプレーをしているように見えます。日本人にしかできないサッカーで世界と戦ってほしいと思います。
遠山健太からの運動子育てアドバイス
私が小学校3年生のときに「キャプテン翼」が流行りだし、野球三昧だった生活から一転、周りに流されて学校のサッカークラブに入部することになりました。ボールを強く蹴る、コントロールしながら小さく蹴って前に進む(ドリブル)、動いている相手にパスをするなど、始めていきなりできる技術ではなく、上手くなるには結構練習が必要だったのを覚えています。蹴るスポーツというとサッカーのイメージが強いですが、古くは蹴鞠(けまり)があり、現代ではフットサル、セパタクロー、アメリカンフットボール、ラグビーなど、蹴る動作が入った種目は意外と多いものです。いろんなスポーツを観たうえでいろんな「蹴る」を体験してみることをお勧めします。公園で安全にできる羽のついたジェンズ(蹴る用のシャトル)もぜひ試してみてください。