東京2020はさまざまなスポーツをお子さんとともに楽しめるまたとないチャンス! そこで、子どもの運動能力向上に詳しいスポーツトレーナー・遠山健太が各競技に精通した専門家とともにナビゲート! 全33競技の特徴や魅力を知って、今から東京2020を楽しみましょう。今回は「新体操」。競技解説は新体操強豪中学校・高校で医科学サポートを実施してきたアスレティックトレーナー、平井晴子さんです。

  • 新体操

    「新体操」の魅力とは?

新体操の特徴

新体操は、13m四方のマット上で演技を行う採点競技で、種目はリボン、フープ、クラブ、ボール、ロープの5種目。団体と個人で競技が分かれており、団体は5人全員が同じ手具を持つ単一種目と、2種類の手具を持つ複合種目の2種目をそれぞれ2分15秒~2分30秒演技します。一方、個人ではロープ以外の4種目をそれぞれ1分15秒~1分30秒演技します。1984年のロサンゼルス大会から公式種目となりました。

新体操の採点方法は個人と団体で構成内容は同じですが、配点が少し異なります。D得点は、身体難度、ダンスステップコンビネーション、回転を伴ったダイナミック要素、手具難度(団体では連携)の4要素で「難度」が採点され、E得点は10点満点からの減点方式で、手具の落下や身体表現、音楽との一致などの「出来ばえ」が評価の対象になっています。 2018年から新ルールが適応され、Dスコアの10点満点という上限が撤廃されたことにより、高得点を狙うために難しい技が数多く取り入れられています。繊細でダイナミックなテクニックだけではなく、選手たちの表情や感情、音楽と踊りの持つストーリーにも注目してみてください。

新体操選手の特徴といえば、すらりと伸びた長い手足と高い柔軟性。小さなころからストレッチングを欠かさず、最もメジャーな方法として椅子に両脚を乗せた状態で180度以上(!)の開脚度をキープします。そんな全身の高い柔軟性によって美しい演技が生み出されるのです。

新体操を観戦するときのポイント

個人では4種目をこなす高い技術と、音楽、衣装、メイク、手具の美しい調和がポイントです。特に、長さ6mもあるリボンがまるで生きているかのように動く様子と、しなやかで美しい身体の動きの融合は、観ている私たちを魅了してくれることでしょう。

団体では5人が同時に手具を高く放り投げて、別々のところでキャッチするなど、呼吸を合わせた一体感のある演技が見どころです。東京2020では、柔軟性を生かしたしなやかな演技が魅力である「ボール」と、ダイナミックでスピーディーな演技が魅力の「フープ・クラブ」の2種目が行われます。身体のさまざまな部位を使って投げたりキャッチする巧みな操作テクニックが、息つく暇なく繰り返される演技に圧倒されること間違いなしです。

東京2020でのチームジャパンの展望

団体の日本代表チーム「フェアリージャパンPOLA」は、トライアウトなどでメンバー選考が行われており、山崎浩子強化本部長らの指導のもと、強化が進められています。2019年に行われた世界選手権の種目別ボールで団体史上初となる金メダルに輝き、さらに総合では44年ぶりとなる過去最高タイの銀メダルを獲得しました。東京2020での日本新体操史上初となるメダル獲得が大いに期待されています。

ちなみに、金メダルを独占しているのはロシアですが、フェアリージャパンは年間350日にわたってロシアで共同生活を過ごしています。そこで培った技術、精神力、一体感による一糸乱れぬ演技は必見です。

個人では、2019年の世界選手権で13位となった皆川夏穂選手が出場枠を獲得しています。日本は最大2枠獲得を目指して4月のW杯シリーズを戦い、2枠を獲得できた場合のもう1名は、大会の成績あるいは選考会で選ばれる見込みです。

遠山健太からの運動子育てアドバイス

女子の種目ということから、これまでの人生で一度も触れることがなかった新体操。体操競技との違いもあまりよくわかっていなかったのですが、トレーナーの派遣業をしている関係で、フィットネスクラブの新体操教室を見学する機会も増えてきました。聞けばフィットネスクラブでは、競技というよりも表現力やリズム能力などの向上を期待している保護者が多いようです。バレエとよく比べられる新体操ですが、手具やボールなどを使う点においては、幼少期に体験しておくと、球技や道具を扱うスポーツに転向しやすくなるかもしれませんね。

競技解説:平井晴子

2012~2018年、東京の新体操強豪中学校・高校にて医科学サポートを実施しつつ、新体操教室の講師やダンサーのパーソナルトレーナーも歴任。また、2013年から現在に至るまで7人制ラグビー女子日本代表アスレティックトレーナーも務め、2016年リオデジャネイロオリンピックに帯同。現在はコンディショニングコーディネーターとしてリハビリやケガ予防に取り組む。NATA-ATC、JSPO-AT