東京2020はさまざまなスポーツをお子さんとともに楽しめるまたとないチャンス! そこで、子どもの運動能力向上に詳しいスポーツトレーナー・遠山健太が各競技に精通した専門家とともにナビゲート! 全33競技の特徴や魅力を知って、今から東京2020を楽しみましょう。今回は「マウンテンバイク/自転車競技」。競技解説は、マウンテンバイク競技経験者であり、現在はマウンテンバイク競技チームを結成して選手のサポートを行っている山田智さんです。
マウンテンバイクの特徴
マウンテンバイクは、1970年代にアメリカで山を下る遊びから始まったもの。現在、マウンテンバイクの競技は、クロスカントリーがオリンピック、エリミネーター、マラソン、リレーなど8種目、ダウンヒルが2種目、さらに4X(フォークロス)、エンデューロと細分化され、ワールドカップや世界選手権をはじめ多くの大会が世界各地で開催されています。オリンピック競技としては、1996年のアトランタ大会からクロスカントリー・オリンピック(東京2020ではクロスカントリーと表記、以下XC競技)が正式採用されています。
XC競技は、約4~6kmの周回コースをおよそ90分という競技時間の中で、決められた周回を誰が一番速くゴールするかを競うシンプルな競技です。年々、レースの高速化とセクションの難易度が高くなってきており、コースには落差1m以上のジャンプ、大きな岩場や巨木を横たわらせたセクション、ハードなヒルクライムやシングルトラックセクションなどが設定されています。そのコースに対応するため、使用されるマウンテンバイクは軽量化されたカーボンフレームの前後に、サスペンションがついたフルサスペンションバイクが主流です。
マウンテンバイクを観戦するときのポイント
2019年の10月6日、東京2020のXC競技の会場となる静岡県修善寺のサイクルスポーツセンターに、男女世界チャンピオンをはじめとした多くの世界トップの選手、日本のトップ選手たちが集結し、テストイベントが開催されました。
そこで披露されたXC競技のコースは全長約4km、高低差160m。コース内に8カ所設けられたテクニカルセクションには、"日本"や"伊豆"をモチーフとした「天城越え」、「浄蓮の滝」、「散り桜」、「枯山水」、「踊り子歩道」といった名称がついています。また、後半の伊豆半島をかたどった「伊豆半島」セクションでは、周囲に花畑(テストイベント時はコスモス)が造られていて、とても日本らしく美しいコースです。
コースは非常にコンパクトにまとめられていて、どのセクションも徒歩で移動できます。まず、スタートして緩やかな舗装のコースを上るとすぐの「天城越え」では、急斜面に置かれた岩場を越えていく登り、そして落差のあるジャンプなどが設定されており、その名のとおり、最初から厳しいセクションとなっています。テストイベントでも大勢のギャラリーが声援を送っており、東京2020でも最大の観戦ポイントになるはずです。
また、コースの前半から中盤に設定されている「浄蓮の滝」、「箸」、「散り桜」は、難易度が高く、見栄えのいいセクションとなっています。コース後半は、派手なセクションが少ない代わりに、地味に選手の脚を削る(体力を消耗させる)レイアウトになっているため、レース後半で選手達の脚(体力)が残っているかを注目してみるとよいでしょう。いずれの場所でも、選手達の息づかいを間近で感じながら応援できるのが、XC競技観戦の最大の魅力です。
東京2020でのチームジャパンの展望
テストイベントに参戦した世界トップレベルの選手たちが、テストイベント後に口をそろえて、「コース、フィジカルともにとても難易度の高い、素晴らしいコース」と言っているように、XC競技コースとして世界最高レベルとなっています。
日本人選手でテストイベントを完走できたのは、ワールドカップを転戦している全日本チャンピオンの山本幸平選手だけでした。それほどまでに厳しいコースですが、テストイベントの経験やデータを生かしたオフトレーニングを経て、2020年に行われる代表選考会でチームジャパンにふさわしい日本人代表選手が決まり、東京2020を熱く駆け抜けてくれることでしょう。
遠山健太からの運動子育てアドバイス
スキーチームのトレーナーをしていたとき、オフシーズンのトレーニングで、スキー&スノーボードクロスの選手が好んで取り入れていたのが、マウンテンバイクの「ダウンヒル」でした。オフロードの下りのみのコースで、とてつもなく速いスピードで山から下りるのがトレーニングとしてよかったようです。マウンテンバイクの魅力はなんといっても自然の中での走行でしょう。自転車をこぐことは幼少期に身につけるべき基本動作の1つとされていますが、同時に自然の優しさと厳しさが味わえるマウンテンバイクをぜひ体験してみてください。