東京2020はさまざまなスポーツをお子さんとともに楽しめるまたとないチャンスです。そこで、子どもの運動能力向上に詳しいスポーツトレーナー・遠山健太が各競技に精通した専門家とともにナビゲート! 全33競技の特徴や魅力を知って、今から東京2020を楽しみましょう。今回は「ゴルフ」! 競技解説はトレーナーとしてゴルファーを支える草野豊勝さんです。
ゴルフの特徴
前大会・リオデジャネイロオリンピックで100年以上ぶりに競技として復活したゴルフ。1ラウンド18のホールからなる様々なレイアウトのコースを最大14本のクラブを用いて、少ない打数でホールアウトを目指すゲームのため、1打の重みが非常に高いスポーツです。
また、ほかのスポーツと比較して、複雑なルールやマナーが多いのにも関わらず、通常は審判がおらず、基本的にプレーヤー自身の判断に託されます。スポーツマンシップに則りフェアプレーを心がけ、紳士的な精神を育てるスポーツとして「紳士のスポーツ」と呼ばれています。
ゴルフを観戦するときのポイント
ゴルフは自然の中で行われるとあって、同じシチュエーションはありません。そんな環境の中でクラブを正確にコントロールし、小さなボールを思い通りに打ち出すためには、「研ぎ澄まされた身体感覚」「汎用性が高いフィジカル」「高い精神力」が必要です。1打1打に集約されるトップアスリートたちの能力は必見。同時に、戦略的に生み出される様々なショットの"技"も見逃せません。
また、ゴルフは4日間戦い抜いて勝敗がつきます。しかも、東京2020が開催されるのは猛暑日が予想される時期。そんな過酷な状況下で勝つには、疲労の蓄積しにくい身体づくりやコンディション維持も重要になるでしょう。今、ゴルフ界で注目されるコンディション要素は「自律神経」です。自律神経は交感神経系と副交感神経系からなり、自律的に身体の様々な機能を調整してくれる重要な機能です。プレーするときは、リラックスした副交感神経系が優位な状態が理想とされますが、疲労が蓄積したり、ストレス・プレッシャーが高くなると交感神経が優位となり、身体が緊張して思い通りにクラブをコントロールすることができなくなり、ミスにつながります。ミス→プレッシャー・ストレス→交感神経優位→再度ミスといった悪循環に陥り、トッププレーヤーでもたった一度のミスで調子を崩して勝利を逃すパターンは多いです。
そんな自律神経のコントロールにひと役を買っているのが、選手達が時折見せるクセやゲン担ぎのような仕草。独特のルーティンワークを観察するのも楽しく観戦するポイントです。
東京2020で注目する選手たち
東京2020に出場が期待されている一番の注目選手はアメリカのタイガー・ウッズ選手でしょう。2019年7月現在でPGAツアー通算81勝、メジャー15勝を誇るスーパースター。2013年以来、ケガやトラブルで優勝から遠ざかっていましたが、今年、ゴルフ4大メジャータイトルの一つ「マスターズ・トーナメント」で11年ぶりにメジャー制覇をしました。
タイガー・ウッズ選手がゴルフ界を変えたと言われているのが、それまで否定的に捉えられていたウエイトトレーニングを積極的に取り入れたこと。これにより、他を圧倒する飛距離の実現に成功したため、そのあと彼を模範とする選手たちも続いたのです。その結果、ここ20年間でドライバーの平均飛距離が約20ヤード以上も伸びています(もちろん道具などの進化などもありますが)。
日本人でいうと、前大会で出場を辞退した松山英樹選手(世界ランキング32位※)が東京では出場するのかどうかに注目が集まっています。女子では宮里藍選手が持っていた日本女子ゴルフ最年少ツアー出場資格の記録を更新したことで有名な畑岡奈紗選手が最有力候補。アメリカツアーでも勝利をあげ、現在は世界ランキングでも6位※と、他の日本女子選手から抜きんでています。「メンタルも強い」とジュニア時代から折紙付きの彼女であれば、オリンピックの大舞台できっと活躍してくれるでしょう。
※世界ランキングは2019年7月1日現在
遠山健太からの運動子育てアドバイス
今やゴルフは選手になるには幼少期から始める人が多いですが、昔はジャンボ尾崎さんや岡本綾子さんのように違う種目から転向して成功をおさめる人も多くいました。私自身、小学校5年生からゴルフを始め、25歳で引退するまでクラブを振り続けた結果、肩のケガに悩まされ、クラブを振るという非対称的な動きをずっと行うマイナス面を感じています。一打の重要性を教えられ、競技の厳しさも学びましたが、今思うと楽しさの部分が欠けていたように思います。ゴルフを本格的に始めるのは高校生からでもよいので、幼少期は趣味としてやりつつ、いろんなスポーツを体験してもらいたいと思います。
競技解説:草野豊勝
全身スーツ型EMS「E-Fit」国内プログラム開発責任者。「美尻シェイパー」エクササイズ監修者。主にパーソナルトレーナーとして一般ゴルファーからプロまで幅広く担当し、述べ10,000件以上のトレーニングを行いながら、各種運動機器などのプログラム開発・人材育成も行う。アメリカスポーツ医学会/運動生理学者、JGFO ゴルフフィットネストレーナー、健康運動指導士。ナビゲーター:遠山 健太
リトルアスリートクラブ代表。トップアスリートのトレーニングに携わる一方で、ジュニアアスリートの発掘・育成や、子どもの運動教室「リトルアスリートクラブ」のプログラム開発・運営など、子どもの運動能力を育むことに熱心に取り組む。自身、2児の父であり、子どもとともにめぐった公園での運動や子育て経験を生かし、パークマイスター(公園遊びに詳しく、子どもの発育を考えて指導ができるスポーツトレーナー)としても活動している。著書は『スポーツ子育て論』(アスキー新書)、『運動できる子、できない子は6歳までに決まる!』(PHP研究所)、『ママだからできる運動神経がどんどんよくなる子育ての本』(学研プラス)など多数。