続々と増えていくオールドレンズたち。仕事で疲れたとき、ふと手に取り、金属の感触を確かめ、キレイな絞り羽根をのぞき込み、用もないのにヘリコイドを回したりして、心癒やされる日々を過ごしています。オールドレンズって、なぜこうも魅力的なんでしょう。今回は、タクマー、リケノン、ロッコールの独特な写りについて紹介していきます。
ならではの表現を楽しむ
オールドレンズ沼の入り口としてぴったりなのが、旭光学工業のタクマーシリーズです。一部のレンズには微量の放射性物質を含んだトリウムガラスが使用されており、経年による黄変でノスタルジックな描写になることが知られています。市場には安価で状態の良い個体がたくさん出回っています。
なお、放射性物質と聞くと心配になるかもしれませんが、トリウムガラスを用いたレンズで撮影するくらいなら問題ないと言われています。ただこの辺りは心理的な感覚も大きいところだと思うので、最終的には自己判断というところでしょうか。
筆者が手にした「Super-Takumar 50mm F1.4」も、レンズにはそれなりの黄変が見られました。開放で撮ってみると輪郭線が優しくソフトになり、にじんだ色あいになります。現代レンズのキッチリくっきりした写りに慣れた目で見ると、とても新鮮な印象を受けるでしょう。
タクマーシリーズではゴースト、フレア、タマボケなど、オールドレンズならではの表現も存分に楽しめます。
ところで、国内のオールドレンズ市場には現在、焦点距離にして50mm前後の単焦点レンズで普及価格帯の名玉が数多く存在します。その理由は、1960~1970年代に各メーカーが自社のカメラを普及させたい思惑から、標準レンズの開発にしのぎを削ったから。結果、安くても写りが良い50mm前後のレンズが次々と登場したのです。標準レンズとは、焦点距離が50mm前後のレンズを指すことが多く、見た目に近い自然な画角と遠近感で写るとされています。
余談ですが、オールドレンズには愛称・異名で呼ばれる名玉もいくつか存在します。筆者が2,500円で購入したRICOH XR RIKENON 50mm F2も、そんなレンズのひとつ。解像度の高さから「和製ズミクロン」なんて異名で呼ばれたりもします。引き合いに出されるのは、ライカの名玉「SUMMICRON 50mm F2」です。
さて、いまはなきブランドのレンズが使えるのもオールドレンズの良いところ。個人的にロマンを感じるポイントです。ミノルタ、コニカをはじめ、カメラ事業から撤退したカメラメーカーは古今東西、数知れず。レアなメーカーの知られざる名玉ともなれば、コレクション欲も大いに刺激されます。そうしたレンズは相応に高額ですが、いつかは手にしたいものです。
ミノルタは自社のレンズをロッコールと命名しました。創業の地(現在の兵庫県西宮市)からほど近い六甲山が名前の由来です。多層膜コーティングによってレンズ表面が緑色に見えるため、カメラファンからは「緑のロッコール」という愛称で長く親しまれました。ミノルタのカメラ事業は2006年4月、ソニーに継承されています。「α」ブランドのカメラは、もともとミノルタが手がけていました。そんな歴史を思うと、ミノルタのレンズはソニーのカメラで使いたくなります。
フード探しにも熱が
ミノルタのレンズを購入したとき、純正のかぶせ式レンズフードが付いてきました。「minolta」のフォントがおしゃれで、フレアの広がり具合も絶妙。このデザインに一瞬で惚れました。
「オールドフード」も探し始めるとキリがない分野。花形、筒型、角型など種類が豊富で、国内外のメーカーが個性的なフードを出しています。オールドレンズを買い求めつつ、オールドフード探しにも熱の入ってきたここ最近です。